第3回 印田さんの考える「通訳」の仕事

通訳の仕事

当サイトの連載や、電子書籍コーナーでもお馴染み『英語への情熱/レッツ・スピークアップ!』の著者でもある日英同時通訳で活躍していらっしゃる印田知実さんと、その本の編集を担当し、当サイトの編集部のメンバーである近藤淳司との対談をお届けします。
TOEIC990点満点34回にて自己記録更新中の印田さんと、自らの著書で『ボクはパリ症候群、だった』と自称する近藤氏が、日本人の英語について熱く語ります。第3回目は、印田さんの考える「通訳」の仕事ついて。

印田さん、近藤氏のプロフィールはこちら


同時通訳で心がけていること

近藤前回の英語学習のお話を伺ってて思ったのは、例えば野球とかサッカーを本格的に楽しみたいとなったら、やっぱり日頃からとりあえず訓練を正しく積んでおくということが必要になってくる。日曜日、毎週草野球をやる程度であればそういう練習は必要ないかもしれませんが、やはりある程度のレベルになりたい場合は、やはりそこはジョギングだとかトレーニングだとか、個別の練習を積み上げていかないといけないし、さらに言うと趣味でやってる野球とかサッカーでさえそうなのですから、プロとなっては何をか言わんやです。そういうところが英語学習に似ていますね。

印田(敬称略):スポーツ選手の例えってすごくわかりやすいと思うんです。やっぱり動いて、いちいちこう動くんだなっていうふうに考えていて。それはすぐ出てこないといけないっていうのはありますよね。
同時通訳に関して私が心がけてるのは、英語が「ボーッ!」と出てくるみたいな、ゴジラの火みたいな感じで、押されたらバーっとしかも正しい英語がばあっと出てくるっていう。それを同時通訳の私は理想像としているんです。

近藤:やはり瞬時に答えられなければ、2人が話してる中でそのリズムを乱してしまう。

印田:そうですそうです。やはりですね、一定レベル以上の方々のお話になると、お互いにすごくわかってるわけです。専門用語はもちろん、日本語がわかってるんじゃなくて、日本人の方が英語がわかってるっていうことなんですけれど、ただそれをちゃんと論理として捉えたいっていうことで、通訳を使われるっていう方もかなりいらっしゃいます。
本とかテクニカルターム(専門用語)はわかってるけども、それをちゃんと繋げてしかも自分の発信もしたいという理由で通訳を使われる際には、こちらがちんぷんかんぷんなテクカルタームは何だったっけみたいなことしてると、そこで信用力がポンと落ちちゃうんですよね。

近藤:通訳というのは信用と深く関わっているな、と思うことがニュースになりました。英語字幕の翻訳者である戸田奈津子さんがトム・クルーズの通訳を毎年していましたが、彼の信用を得ているからこそだと思います。やはり通訳はただ単に言葉を右から左に流すだけではないんですね。もちろん一期一会の方もいらっしゃるでしょうけど、印田さんの場合はご指名がかかったりとか、少なくないと思うんですよね。その辺もちょっとお話を伺えれば。

印田:そうですね。戸田奈津子さん、今、多分80歳を超えてるのかな。もう引退されるっておっしゃってましたけど。素晴らしいですよね、やっぱ草分けだなというふうに思います。彼女の場合は字幕ですね。

近藤:ええ少し違いますけども、あくまでもその人間関係という、同時通訳だからって、ただ単に右から左に流せばいいんではなくて、その人の気遣いとか、例えは変ですけど、餅つきの合いの手じゃないけど。

印田:そこですね。どこで止まるかみたいなところまで、恐らく行間を読むじゃないですけども、背景として何が言いたいのかっていったところまでおそらく読んでらっしゃるんだと思います。
私の場合、こちらはどちらかといいますとビジネスの場面なので、そういう行間と言うよりは、それを正しく伝えるっていったところが本当にメインではあるんです。彼女のようなちょっとソフトな業界でいらっしゃると、より行間の深みが重要となってる。字幕は読むのが忙しいですけども(笑)

通訳の仕事は黒子

近藤:一方で今お話を聞いていて、イメージをしながら伺っていたんですけど。印田さんはある方のお話を聞いて、それを通訳するわけですよね。日本語またある時は英語を聞いて。その場合の例えばアイコンタクトとか、その間の取り方のコツって本当に注意をされていると思うんですね。相手が何かを言いたいのをさえぎって、途中で訳させてくれ、というような話ではないと思うのですが。

印田:そうですね。私はすごくこれはありがたいことでもあり、通訳としては負荷がかかるんですけども、結構ありますね。そういう方は、多分私がある程度通訳をできるだろうと思われて、それで何度も呼んでくださってると思うんですけども、延々と、延々と、まるで通訳が居ないかのようにお話になって、私もそれを聞いて何枚も何枚も書きまくって書きまくるんですけど、それで、途中で、「あっ通訳居たんだ!」みたいな、そういうことが結構あったりするんです。それも逆に申し上げると、通訳っていない方がいいんですよね。

近藤:そうですよね。空気のように、ですね。

印田:そう、空気のように。できれば黒子のように居たいので。それはこちらとしては大変負荷はかかるんですけども、通訳の存在がない黒子の透明人間みたいな、まるであたかも2人もしくはもっと大勢が、本当にその言語でもって話をしているような印象が、そこで何ら不自然さもない、っていうのがもう究極の通訳だというふうに思います。

近藤:そうですね。やはり人間というのは会話のリズム、お互いその部分が乱れるとどうしても……っていうのがあると思うんですよ。そこに第三者として介在をしてくるわけですから、真の正確性も重要ですが、そこをくずさないのが真の通訳なのかなというふうにお話を伺って思いました。

印田:ありがとうございます。もうそのように心掛けており、仕事のときはもう本当にイメージとして黒子でいようと思って大体黒い服を着るんです。(笑)

近藤:ええっ、物理的にですか?(笑)

印田:もしカーテンがあるならカーテンの陰に隠れていたいぐらいな感じで。本来の性格とは違うんですけどね。でもそういう感じです。

近藤:すいません、それは印田さんだけですか。他の方もそういう黒い服で?

印田:黒系の格好をされる方は多いんですけど個性があって、ある程度女性らしい格好をされる方も居ますし、仕事とはあまり関係なく、結構カジュアル系な方もいらっしゃるんですけど。私の場合、長年染み付いているので大体黒ですね。

近藤:いやあ、面白いですね。この対談をご覧くださってる方の中にも、同時通訳を目指してるとか、あるいは興味があるという方がいると思うんですけども、通訳の極意とは、まさに『自分が黒子として消えて、会話する2人だけで意思疎通を図ることができるお手伝い』という、大変貴重なお話だったと思います。

印田:ありがとうございます。

つづく


Information

対談のお二人、印田知実さんと近藤氏の書籍をご紹介

英語への情熱/レッツ・スピークアップ!
〜英語への関心を使えるスキルに変えるための初めの一歩!〜
印田知実/著  
近藤淳司/編集

詳細はこちら

パリ症候群

【30分で楽しめるシリーズ!】ボクはパリ症候群、だった。
〜パリ症候群を発症しないためのケース別処方〜

近藤 淳司/著 

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通訳の仕事

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