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第2回 日本の英語学習 現状と課題

当サイトの連載や、電子書籍コーナーでもお馴染み『英語への情熱/レッツ・スピークアップ!』の著者でもある日英同時通訳で活躍していらっしゃる印田知実さんと、その本の編集を担当し、当サイトの編集部のメンバーである近藤淳司との対談をお届けします。
TOEIC990点満点34回にて自己記録更新中の印田さんと、自らの著書で『ボクはパリ症候群、だった』と自称する近藤氏が、日本人の英語について熱く語ります。第2回目は、日本の英語学習の現状と課題について。

印田さん、近藤氏のプロフィールはこちら


日本の英語学習・受験英語について

近藤:印田さん、これは本でも書かれていたと思うんですけども、日本の英語学習の問題点。今の英語学習に関しては多くの方が勉強するにあたって、言い過ぎでなければ苦行のように感じてしまう方がいるのではないかと思っています。
読者にとっても是非聞いてみたいところではないかと思いますので。まず日本の英語学習の問題点についてお考えがあればお聞かせください。

印田(敬称略):そうですね、まずは弊害がどうしてもありますよね。
私が言うまでもなく、この受験英語というものによって、大学または高校で英語によってレベル分けや学部選びが行われるとなると、どうしてもまずそれを意識した暗記ものになってしまいます。
まずは「暗記」って世界なんです。そしてあとは英文読解という形で非常に難解な文章を読み解く形。
『自分から発信していくっていう能力』に関して、もしくは『コミュニケーションとしてやりとりする』っていうところは試験としての要素に入ってこないですよね。
仮に試験にそういうものが入ったとしても、それは試験方法としては実用的なやり方ではないってことになります。そうなるとどうしてもこの暗記、暗記、暗記っていうことになってしまうと思うんです。
例えば英語の文法に関しても、例えば関係代名詞ですとか時制にしてもいろんな時制があったり、まぁフランス語よりは少ないと思うんですけど、仮定法とか理解できていない小中学生に対して、「ちゃんと理解しましょう、そして穴埋めをしましょう、並び替えをしましょう」と。「正答してなんぼ、正解してなんぼ」と言ったそういうものは小中学生には、パズルとはなかなか思えないですよね。

近藤 : なるほど、そうですね。

印田:どうしてもコミュニケーションとしての英語というのは、もう「マイネームイズ・・・」から飛び越えていけないわけですよね。中学だけじゃなくて高校もそうです。
大学においては、より文系科目が少ない理系の方は、英語を使うとしてもコミュニケーションを取る機会がほとんどないと考えると、英語はただの文法でしょう。

そしてその延長として知識を吸収すると言いますか、理解をする意味での英語にある程度素養ができたとしても、そこを越えた中で実際に使っていこうというところには、かなり無理があります。

例えば、アメリカ人から電話が来たから受けてください、じゃそこで切れちゃいますよね。
そのくらい、現実とのギャップを埋める作業が学校英語では行われていないんですね。

あと企業でも英語のコミュニケーション力向上を図ろうということで、トレーニングをしてますが、授業料の一部免除なり全額負担といっても、それに皆さんが全部入れるわけではないので、そこでもコミュニケーションギャップですね。
知ってるんだけど使えないと言う日本の英語学習の状況。
パッシブな知識があるんだけども、アクティブになっていかないっていったところ。
ここがやっぱり一番大きな問題です。

かといってアクティブだけでいいか、例えば小学校から英語やって、ネイティブの先生が来て、そこを一生懸命やればいいのかっていうだけの問題でもないんです。

近藤:なるほど。それはどういうことですか?

大事なのは国語力

印田:やっぱり国語力をちゃんとつけてから、というのが私の考えです。でもそれは早ければいいってものではないと思うんです。もちろん慣れるという意味ではいいのかもしれませんが。
まず国語力を重視するんだという考えで英語をやるっていうんだったら良いのですが、今後は英語が公用化されることで、国語力はここまで、もしかしたら要らないかも、みたいな妥協する考えだけはちょっと避けたいですね。

近藤:本当ですね。日常会話の英語ができればいいかというとそういうわけではなく、基本的にやはりもう一歩踏み込んで関係を作ろうとすると、自分の考えを全て表すのは難しい。かといって、何らかの考え、あるいは自分の思いをある程度自分の気持ちに沿った形で伝えることができなければ関係性が深まっていかないものだと思っているんです。そういう時に英語ができるできないっていうところと、流暢な英語をナチュラルな表現で喋るということ、またちょっと違ってくるのかなというふうには思いますね。

印田:それはすごく思います。
これも本に書いたんですけど、例えば帰国子女じゃないから喋れないですとか、留学してないから喋れないですとか、そういう考え方がありますけど、どちらかといえばジャパニーズイングリッシュでも私は悪くないと思ってるんですよ。相手に通じさえすれば。
アジアの方も英語を使ってますし、アフリカの方も使ってますし、違う言葉ももちろん使ってます。その国訛りってのがどうしても出ちゃうのは、3歳のときにそういう口の形をちゃんと整えた発音になってないとどうしても免れないことなので。
もちろん練習しないといけないんですけども、でもだからといってペラペラ喋れないとか、ネイティブ並みに喋れないとか、そういう形じゃなくって、ちゃんとしたサブスタンス、中身なんですよね。
じゃあ中身をどう持っていくかっていうところは、まず国語力をしっかり鍛えて読書を必ずすること。読書は軽い本だけじゃなくって、それこそ難解なんですけど小説を読むとか、自分の中に膨らみを持たせていくことで、英語に対する素養もやはりできてくるってすごく思うんです。

近藤:なるほど。先ほどの印田さんがおっしゃったところに深く関わってくると思うんですけど、僕は幼児期時の英語をそれほど熱心ではなくても、やること自体については実は少し賛成です。小さいときに英語を学んでいると、発音がある程度は聞こえたりするようになるし、何よりも子供も楽しく英語を学んでいるそうです。
ある調査によると小学校で英語を学ぶことをどう思っているかについて5年生6年生までアンケートをとると、実はみんな英語の勉強が好きだと言うんです。でも、中学校に入った瞬間にみんな大嫌いになると。文法と読解が中心になるからですね。嫌いになってしまってから発音矯正とかリスニング強化をするっていうのは、苦痛でしかないと僕は思ってます。

印田:確かにそうですね。

近藤 : それなら幼児期にずっと毎日っていうところは必要ないのかもしれませんけど、ある程度英語に触れて楽しむというのは個人的には良いと思ってまして、一方で国語力というのもしっかりと学ぶ。総合力ですね、バランスをとっていくと良いのではないかというのが僕の個人的な考えです。

印田:私は受験英語を全く一切否定する気はなくて、やはり文法がしっかりしてたおかげでちゃんと読めるっていうのはありますし、あとちゃんと書けるっていうのもあります。
何か話をするにしても、話すプラクティスが出来てきた中で、土台があるっていうことがあります。
ブロークンイングリッシュ(文法や発音に誤りがある英語)でもOKっていう話もがありますけど、やはりどうしても先ほどおっしゃられた『会話にきちっと自分の言いたいことをきちんと言える』という点ではブロークンイングリッシュだと中々厳しいものがあります。しっかり土台を据えるための文法力とか語彙力が、家を仕上げる度合いを決めるんですよね、どうしても。

近藤:本当に「あるレベルまで」ですね。おそらくブロークンでもあるレベルまでは何とか、かろうじて通じるという段階があると思うんですけど、もしあまりにもブロークンの状態で固まってしまうとそれ以上、上達しない。
特に現地にいらっしゃる方々で、それまでブロークンでやってきたような方々で40歳を過ぎ出したくらいから一定以上の英語を話すことができないという悩みを抱えていらっしゃる方が、少し多いのかなという印象は持っています。

印田:そうですね。
例えば仕事柄どうしても英語を使うという形のシチュエーションなら、そういう英語でしたら問題なく通じるっていうのはあると思うんです。
けれどもやはり人間って職場を離れた中で、また職場の中でも折に触れて、ちょっと仕事を離れた違う面をお互い垣間見ることってあると思うんです。そのときの単語力なり語彙力がなければ、そこを理解もできなければ発信もできない。職場や仕事だけではもしかすると通用するかもしれませんけど、それ以上広がらない。人間関係が広がらないんです。
仮にアメリカ、又は英語圏に住んだとしても、吸収できる知識というのはどうしても限られてしまうっていうのがあります。仕事とか学校とか言うだけではなくて、生活の中でもっといろんなことを知ることができてもっとエンジョイができるかもしれないのに、それをあえて狭めてしまってるっていうのは非常に勿体ないかなっていうのがありますね。
やっぱりブロークンでいいやっていうのではなく、できるだけちょっと苦しいかもしれないけれども受験英語などの文法はやっておくに越したことはないってすごく思います。

第3回 印田さんの考える「通訳」の仕事 につづく


Information

対談のお二人、印田知実さんと近藤氏の書籍をご紹介

英語への情熱/レッツ・スピークアップ!
〜英語への関心を使えるスキルに変えるための初めの一歩!〜
印田知実/著  
近藤淳司/編集

詳細はこちら

パリ症候群

【30分で楽しめるシリーズ!】ボクはパリ症候群、だった。
〜パリ症候群を発症しないためのケース別処方〜

近藤 淳司/著 

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