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とある常連客の肖像/今夜の一杯 『カリラ 12年』

とある常連客の肖像/今夜の一杯 『カリラ 12年』

興味はあるけど、BARに行ったことがない方に、BAR「HONESTY」のマスター田頭大輔氏が、BARの様々な話やお酒のお話をお届けします。

とある常連客の肖像

常連のお客さま、の定義はお店によって違うかも知れませんが。

当店には地元のお客さまはあまりいらっしゃいません。
わざわざお仕事帰りに途中下車してくださったり、逆にお休みの日などに当店を目掛けて足を運んでくださる方が多いのです。
駅前にもお店はたくさんあるのに、本当にありがたく思います。

そんな「わざわざ」な方々ですので、当店の目安としては月に2、3度も来ていただけたら十分に常連さんだと思っています。
もちろん大変お忙しかったり、もっと遠方の方々もいらっしゃいますので、決して頻繁に来てくださる方だけが大事なわけではありません。
ずっと来たかったけど今日やっと時間ができたから、なんてお声も本当に嬉しいです。
奥様がなかなか許してくれなくて、という方はもう少し家族サービスを頑張ってください。

さて、そんな中でもお一人、週に何度も来てくださる常連さんがいらっしゃいます。
千住が地元ではないですが近所にお住まいで、当店には5年ほど前からいらしている、たまたま店主と同い年の男性Oさん。
来店頻度の高さから他のお客さまの認知度も高く、かつとても温厚な方なので、当店の空気を一段柔らかくしてくださっています。
洋酒には特に詳しいわけではないですが、飲み屋が好きで、毎日のようにどこかで美味しいものを摘まんでいます。
その中の一軒に当店も含めてくださっていて、帰り道ということもあり、飲んだ後の一番最後に寄ってくださいます。

「Oさん、こんばんは。
今日も締めの一杯ですか?」

何軒か寄った後なので、一言目には大抵「締めの一杯」と仰います。
10回のうち9回は守れないんですけどね。

「ハイボールですね。
今日はなに食べて来たんですか?」

なにを食べた後の口なのか。
それによってどんな味わいのものを美味しく感じるのかが変わります。
なのでとても重要な情報です。
当店に慣れたお客さまだと、お席に着くなり「今日は〇〇に行ってきました」
と、もう最初に言ってくださる方も増えてきました。
でもそんなところまで気にするお店はあまりないらしく、初めての方へお聞きすると、
「ごめんなさい、匂いしますか?」なんて気にされてしまうこともあるのですが、違います。
その時、最適な一杯をお出ししたい一心です。


今夜の一杯 『カリラ 12年』

「あそこの焼き塩鯖ですか、いいですね、羨ましい。
じゃぁアイラがいいですかね、焼きだと…
いつも通りになっちゃいますけど、やっぱりカリラですかね。」

スコッチウイスキー(※)のシングルモルト(※)を嗜む方にはお馴染みかと思いますが、「アイラ」というのはスコットランドにある島の名前で、どこの蒸留所も主に塩気や磯っぽさ、スモーキーさが特徴のクセのあるウイスキーを作ることで知られています。

特徴からも想像できそうですが、これが魚介類に合うんです。

今回は油の乗った焼き魚の後とのことで、その余韻を感じながらも流してくれそうな、カリラ蒸留所のスタンダードタイプ、12年をお選びしました。

同系統の香り、味わいだと最近は『ラガヴーリンの8年』がありますが、ラガヴーリンの方が麦の甘さが少し強いように感じたので、比較するとやや酸味があるカリラの方が合うかなと提案いたしました。

Oさんは味付けよりも素材を活かした調理の、洋食よりは和食の機会が多いので、自然とカリラをおすすめすることが多くなってしまうのですが。

いつも通りのハイボールは、今日も馴染むようです。

ハイボール カリラ 12年

「あそこ、今日も混んでましたか?いやぁ、平日なのにさすがですね。
週1休みじゃ自分はなかなか行けないんで、よその噂聞けると嬉しいですよ。
ありがとうございます。」

自分でお店をやっていると、お客さま伝いに他所のお店の情報も入ってきます。
また近くに新しいお店ができると、お客さまとどちらが先に行くか競うこともあります。
お店同士が顔見知りとなると、その共通のお客さまが間を繋いでいてくれたりもします。
Oさんのような方は、どこか一軒の常連さんと言うより、その街の常連さんと言えるかも知れませんね。

そんなすっかり馴染みのOさんですがご来店当初は、酔ってカウンター席でよく居眠りしていたものです。
ご本人とも時々笑い話にしていますが、店主は当時だいぶ冷たく接していたはずです。
それでもなぜだか、「ここで飲めるようになりたい」との気持ちがあったそうで。
通っていただくからにはと、バーで、飲み屋で歓迎される術を強くお伝えしました。
今やもう余程クセの強いお店でない限り、Oさんが歓迎されないなんてことはないと思います。

そんなようなお話をしているうちに、Oさんのグラスが空いたようです。

「…はい、締めの締めの一杯、ですか。
いつも通りですね、ありがとうございます(笑)」

本当に、すっかり馴染んでいただいたものです。
今夜も長くなりそうですね。

今日もありがとうございました。
近所でも気を付けて帰ってくださいね。
おやすみなさい。


注) 用語解説(ウイスキー用語集) ■スコッチウイスキー ■シングルモルト

Information 記事で紹介したお酒 ■『カリラ 12年』 ■『ラガヴーリン8年』(Amazon)

BAR HONESTY 店舗情報

■住所:〒120-0033
東京都足立区千住寿町2-17 松岡ビル4F
http://www.bar-honesty.com/

■電話番号:03-6806-1737
※お電話は営業時間内にお願いします。

■営業時間:17:00~翌2:00
定休日 水曜日

■12席 ※1グループ4名様まで 貸切応相談

とある常連客の肖像/今夜の一杯 『カリラ 12年』

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