美味しいカクテルとは?
先月、バーテンダーの先輩が経営している「BAR 石の華」へ数年ぶりに伺いました。
私にとって石の華のオーナーの石垣さんは師匠のような存在で、カクテルが右も左もわからなかった時にカクテルへの向き合い方を教えていただいた方です。
今回は、カウンター越しに石の華のオーナーである石垣忍さんと話をして「美味しいカクテル」について感じたことをまとめていきます。
石垣さん(BAR 石の華)について
カクテルの話をする前に、BAR 石の華の石垣さんのことを簡単にご紹介します。
石垣さんは、バーテンダーの世界ではレジェンド的な存在で…
- 2002 全国バーテンダー技能競技大会で優勝
- 2003 「Bar 石の華」を渋谷にオープン
- 2005 IBA(国際バーテンダー協会)公認の世界大会(イタリア・トリノにて開催)日本代表として出場。最も権威のあるシニア部門(29歳以上)において優勝。世界一になる。(第40回 BACARDI MARTINI GRANPRIX 2005 大会史上初、東洋人優勝を飾る)
- 国際的な美術展、老舗高級ブランドのオープン記念等でイメージカクテルの考案に当たるなど、多方面で活躍。「CALPIS BarTime®」「SEIKO MECHANICAL 石垣 忍 カクテルモデル」等をプロデュース。
という実績を残している方です。※店舗公式サイトからの引用 https://ishinohana.com/
石垣さんが、私の師匠的な存在ということもありますが、忖度なく評価しても石垣さんが作るカクテルが一番美味しいと思っています。
バーテンダーをやっていて、お酒の楽しみ方は人それぞれと思いますが、私は、
ウイスキーは、製造工程上、貯蔵し熟成させるので、歴史を嗜む飲みもの。
カクテルは、柑橘等、フルーツを使うことが多いので、今を楽しむ飲みもの。
と考えていますが、
石垣さんが作られるカクテルは、飲んでいる最中でも更に香りや味わいが広がっていく感覚があり、まるでカクテルが生きているように感じるカクテルを提供されています。
また仕事に向き合う姿勢も素晴らしく、普段努力されている話を伺った時に、
「野球の世界にもイチローがいたように、どの世界にもイチローようなプロがいるんだな」
と思った事を今でも鮮明に覚えており、日本にカクテルの世界大会で優勝している人は何人もいますが、その中でもトップに君臨する方だと思います。
美味しくないカクテル
バーの世界では、「本当に美味しいカクテルは、3口で飲み終わる」と言われます。
美味しくて飲んでしまうという表現をするバーテンダーがいますが、美味しくて飲んでしまうロジックが成立しているからこそ、飲んでしまうという表現が正しいです。
前述で説明しました通り、数年ぶりに石の華を訪問したこともあり、カクテルを楽しみながら、色々お話することができました。
その中で、「和梨をカクテルにするのは難しい」という話になりました。
一般的に水分が多いフルーツをカクテルとして提供することは、難しい傾向にあります。
理由は、水分量が多いので、締まりがない味わいになりやすいからです。
個人的な話になりますが私自身が和梨が好きなこともあり、現場に立っている時にあの手この手を使って和梨のカクテルを作ろうと何回も試作を繰り返していましたが、結局、カクテルにすることができず、断念したことがありました。
たぶん自分からカクテルにしようと思って、取り組んだにも関わらず、商品として創り上げることができなかった唯一のフルーツです。
石垣さんに和梨について話を伺ったところ、
「カクテルにできなくはないが、カクテルでは和梨のポテンシャルを発揮することは難しい。和梨が持つシャリッとした食感が、和梨の美味しさを最大化する要素で、飲み物ではその食感を表現できない」
と回答がありました。
要は、和梨をカクテルにしようとすると、
和梨が持つ素材としてのポテンシャルを引き出すことができない
それでも、プロセス上成り立たせようとすると、(例えば、シロップを沢山入れる等)プロセス上どこかに無理が生じる
というであり、
本来、あるべき姿から違う形に無理に変容させようとすると違和感が発生する。
そして違和感があるカクテルは、無意識的に飲むペースが遅くなる。
ということです。
ちなみにですが、オリジナルカクテルの場合、カクテル名から想像される味わい・期待にいかに寄り添ったレシピ・プロセスを設計・計算していくのかが重要で、そのバランスが悪いと苦い薬を飲む時のように、喉に入っていきません。
和食的発想から生まれる美味しいカクテル
「和食は、引き算。洋食は足し算」と言われます。
和食は、アクを引く、湯引き、えぐみ・臭みを引く等、 余分なものを「引く」ことで、素材そのものの香りや味を最大限に「引き」出すと言われており、一方で洋食は、もともとの素材にスパイスやワイン、ハーブなど、味と香りを「足し」重ね、複雑で奥深い味わいを出すと言われています。
ちなみに和食は水墨画、洋食は油絵とも言われたりします。
カクテルにおいても、使用している素材を最大限引き出すことが重要です。
お酒の知識がないお客様が聞いても納得するようなロジックが必要で、そのロジックが正しいからこそ、違和感のない美味しいカクテルができます。
ここには、職人的な要素はあまり関係ないことだと思います。どちらかと言えば、科学に近いかもしれません。
フルーツカクテルは、商品価格が高いため客単価を上げやすく、また旬を感じられるので、提供しているお店は多いですが、どこのお店も洋食のようなカクテルが多いです。
残念ながら、安価なフルーツを沢山使用して、後はシロップで味つけしている店が多いです。
日本食が世界的に評価されているように、カクテルでも和食の考え方で作られたカクテルが一番美味しいと思います。
PS: 本当に美味しいカクテルを飲みたい方は、是非一度、石の華でカクテルを飲んでみてください。
■Bar 石の華 東京都渋谷区渋谷3-6-2 第2矢木ビル B1 https://ishinohana.com/
バーのことをもっと知りたい方へのおススメ記事一覧
【お知らせ】 この記事をご覧の皆様に、投稿者 福岡さんのお店「BAR DEEP」よりお知らせです。
BAR DEEP 店舗情報
■住所 : 福岡県福岡市中央区西中洲1−14 プロスペリタ西中洲6F
BAR DEEP オフィシャルサイト
https://bar-deep.com/
■営業時間 : 平日・金土・祝日前…21時〜4時30分
日・祝日…21時〜3時30分
※営業日については、Instagramにて確認ください。
■Instagram
飲み放題へのこだわりが日本一のBARです。
https://www.instagram.com/bar_deep_nishinakasu/
■お仕事や御相談などお問い合わせ
fukuhashi0101@fukuhashi.jp
この記事に関するコメント