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フードデザイナー須賀いづみさん(後編) / ワインの楽しみ方 仕事で輝くワインラヴァーたちとのワイントーク!

須賀いづみさん

ワインを楽しんでみたいけど、ちょっと敷居が高い……そう感じている方、とても多いのではないでしょうか。私もワインを学ぶ前の20代前半の頃はそうでした。でも大丈夫。知識があろうとなかろうと、私の周りのワイン女子のみなさんは、様々な方法でワインを日々エンジョイしているようです。彼女たちがどんなキッカケでワインを好きになり、今はどんな楽しみ方をしていて、どんな悩みや疑問を持っているのか。インタビューを通じて皆さんのリアルなワインライフを探ってみました。

前回に引き続き、フードデザイナーの須賀いづみさんにお話を伺いました。前編はこちら

聞き手 瀬川あずさ、近藤淳司(編集部)

 


「ワインやマリアージュって興味はあるのに、自信のなさが踏み込む勇気を邪魔していたけど、だいぶイメージが変わってきました」

「味わい」だけじゃない、マリアージュの楽しみ

瀬川あずさ(以下、瀬川):ワインについて、間違えを恐れずに自分が感じたことを表現するのが大切っていうのは、マリアージュに関しても、同じことが言えるかも。このお料理に必ずこのワインじゃなきゃいけないっていう確固たる正解はないので、自分がいいなと思った感覚を大切にして、自分なりに言葉にしてみてほしいです。

須賀いづみさん(以下、須賀):マリアージュに関して語っている人の話を聞くと、やっぱり難しいなと思ってしまっていたのですが、それが全てではないのですね。

須賀いづみさん

須賀いづみ(フードデザイナー/フードスタイリスト)さんのプロフィール
化粧品会社に勤めたのち、健康と美容の根本は“食”だと思いフードデザイナーに転身。料理家のアシスタントに付き、苦手だった料理を一から徹底的に学び独立。広告や雑誌のフードスタイリング、レシピ制作、食と旅のコラム執筆、SNSアカウントの運用などを行なう。食を通してヘルシー&ウェルネスなライフスタイルを提案。

瀬川:そう思います。マリアージュはもちろん、料理や食材の「味わい」そのものがワインに合うのかが大切になってきますけど、それ以外にも、「生産地が同じ」だとか「生産者の思い」が共通しているとか、様々なストーリーが加わることで、更なる魅力的なマリアージュが生まれてくるので。アプローチ方法は決してひとつではないんです。

編集部 近藤淳司(以下、近藤):今、個人的に日本酒にハマっているのですが……。ワインと合わせるイメージのオリーブとかチーズとも、日本酒って結構相性がいいんですよね。

瀬川:日本酒とチーズの組み合わせは私も大好きです! フレッシュでフルーティーな生酒(火入れをしていない日本酒のこと)や大吟醸にジューシーなモッツァレラチーズを合わせたり、コクと旨みにあふれた熟成古酒に長期熟成したパルミジャーノ・レッジャーノを合わせたりして、楽しんでいます。

近藤:なんとなく、日本酒のアテには刺身とかの純日本食のイメージがあるかもしれませんが、ここでも「思い込み」にとらわれないマリアージュが楽しいのかなとも思います。

瀬川:まさにそうですよね。いづみさんは、せっかくオリジナルのメニュー開発もされているので、固定概念にこだわらないで、いづみさんならではの斬新なマリアージュを提案してみてもよいかもしれません。

須賀:そうやって聞くと、すごく楽しめそうな気がします。

瀬川:いまの時代、フレンチレストランに行っても日本酒が出てくるし、和食のお店でもワインを飲むし、マリアージュもボーダーレスになってきていて、料理のジャンルと飲料のジャンルを揃える必要ってなくなっていると思うんです。

須賀:その流れに乗りたいですね。ワインのベーシックな基礎知識をつけていきながら、そういった遊び心を持ってマリアージュに挑戦していきたいです。ワインやマリアージュって興味はあるのに、自信のなさが踏み込む勇気を邪魔していたけど、だいぶイメージが変わってきました!

瀬川:「自信を持つ」というのはワインを楽しむ上でのひとつの大切なテーマかもしれないですね。

近藤:そうしてみると、須賀さんにとってはあまり良い印象がないかもしれないコンビニのワインも、飲んでみたら意外に良いと思うかもしれません。なんでも固定概念に縛られず、挑戦してみたら新たな発見があるかもしれませんね。

須賀:確かに。もちろんクオリティーが高いワインも知っておきたいですし、一方で低価格のものにも魅力や個性はあると思うし……。どちらかに偏るのではなく、両方を楽しめるようになりたいです。

近藤:リーズナブルなものでも、もしかしたら失敗もあるかもしれませんけど、そこで新たな発見があったら面白いですよね。

瀬川:失敗があるからこそ、いいワインに出会った時の喜びは大きいですからね。

ワイナリー巡りの夢

近藤:今はコロナ禍でなかなか海外に行けない状況ですが、この状況が収まったら行ってみたいワインの産地はありますか?

須賀:やっぱりナパ・ヴァレーかな?

瀬川 :開放的で最高ですよね。ナパ・ヴァレーはカリフォルニアを代表する高級ワインの産地です。世界的に人気な「オーパス・ワン(※1)」をはじめ、有名ワイナリーがひしめいていて、とても楽しいですよ。

※1 オーパス・ワン : フランスのボルドー五大シャトーのひとつである「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」を所有するバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵と、アメリカのワイン界の重鎮、ロバート・モンダヴィ氏のコラボレーションで生まれた、プレミアムなワイン。最高級のカリフォルニアワインの代名詞として、世界中から愛されている赤ワインです。

須賀:旅行はもともと大好きなので、旅行プラスアルファでもう1つテーマを持って巡れたらいいなと思っていて。それがワインだったらどんなに素晴らしいんだろう、って密かに考えています。

瀬川:確かに、外国の現地に行くと色々なことを実感します。ワインはやっぱり農作物で、生産者の思いや、その土地の気候風土が、その味わいに表現されていることが分かります。帰国してからも、訪れたことのあるワイナリーのワインに出会うと、すごく親近感が湧いて、旅の思い出が蘇るんです。

須賀:それは素敵。ワインがもっともっと好きになりそうですね!

近藤:須賀さんは、日本のワインは飲むことはありますか?

須賀:飲みますよ。最近だと「ココ・ファーム・ワイナリー(※2)」のワインをたまに飲んでいます。結構有名ですよね?

※2 ココ・ファーム・ワイナリー : 栃木県は足利の静かな山懐にあるワイナリー。知的障がい者支援施設「こころみ学園」の創設者川田昇氏が保護者らとともに設立したワイン醸造所です。クオリティは年々高まっていて、サミットなどの国際会議の晩餐会でも世界のVIPにふるまわれたことで話題になりました。

瀬川:いいですね! こちらのワイナリーのロゼワイン「こころぜ」や、赤ワイン「農民ロッソ」が、私も好きでよく飲みます。栃木を代表するワイナリーですよね。

近藤:瀬川さんは、オススメの日本ワインはありますか?

瀬川:そうですね。全国各地にワイナリーがあって、それぞれ個性豊かなワインが造られていて、なかなか絞り切れないのですが……。やはりワイン造りが最も盛んな山梨と長野のワインは、最初に試しておきたいところです。

個人的には「グレイスワイン(※3)」とか「ドメーヌ ミエ・イケノ(※4)」など女性醸造家が造るワインを特に応援しています。実際訪問しても魅力的なワイナリーがひしめいていて、とても楽しいですよ。

※3 グレイスワイン : 1923年創業の、山梨の家族経営のワイナリー。日本の固有品種である「甲州」を世界的に有名にした、日本ワインを牽引するワイナリーの1つです。そのクオリティーの高さで多くのファンを魅了していて、世界のワインアワードでも多数の受賞歴を誇ります。女性醸造家である三澤彩奈さんの国内外の活躍にも注目。

※4 ドメーヌ ミエ・イケノ : 山梨県の八ヶ岳南麓にある小規模ワイナリー。「猫の足跡畑」と名付けた自社畑のみで醸したワインは、少量生産のため、リリース直後に売り切れてしまうほどの人気を誇ります。ワインに魅せられ編集者から転身したという、女性醸造家の池野美映さんのこだわりとやさしさに溢れた「幻のワイン」です。

須賀:素敵ですね。是非行ってみたいです。

瀬川:日本なので、造り手さんとコミュニケーションも取りやすいし、気軽に訪れることができるのも魅力です。

例えばブルゴーニュのワイナリーに行くとなると、言葉の壁もあるし、閉鎖的なドメーヌも多く、コネクションを頼らないと見学させてもらえなかったりするので。その点、日本のワイナリーはより身近ですし、訪問しやすいですよね。日帰りでも行けますし。

近藤:日本のワイナリーに見学に行きたい場合は、予約が必要なんですよね?

瀬川:そうですね。直にワイナリーに電話で問い合わせてから訪問するのがベストです。他にも個人が申し込めるツアーも色々あって、例えば山梨県の勝沼だと、タクシー会社とワイナリーが提携していて、定額で数か所まわってくれたりするプランもあります。

例えば「山梨 ワイナリー ツアー」といったワードでネット検索すると、旅行会社のサイトが出てきますよ。収穫の時期になるとワイナリーが収穫祭のようなイベントを開催していたりするので、そのタイミングで訪れるのも楽しいです。

須賀:オススメのイベントはありますか?

瀬川:以前参加して楽しかったのは、富山県の氷見にある「セイズファーム(※5)」さんが主催している「SAYSDAYS」という年に一度の収穫祭です。地元の人気料理店が出店していたり、地元の酒蔵さんとのトークショーがあったり、とても興味深くて充実した体験でした。

2020年と2021年はコロナ禍の影響でイベント開催は実現せず、ラジオ放送局と組んでオンラインで乾杯したとのことですが、今年こそは開催してほしいですね。

※5 セイズファーム : 富山県の氷見市で江戸時代から続く魚問屋が母体のワイナリー。氷見ならではの海の恵みや大地の恵みが詰まったワインは、まさにこの界隈でとれる魚料理とピッタリ。近年はアルバリーニョで造った白ワインの評価が非常に高く、この品種の可能性に挑戦されています。りんごで造った爽やかな微発泡酒シードルもオススメ! セイズファームの公式Facebookアカウントはこちら

須賀:わぁ、すごく行ってみたくなりました。調べてみます。

マリアージュ
ワインを飲むと、新しい世界に出会える!

これからワインを楽しむ方に向けて

近藤:最後に須賀さんに伺いたいのですが、ワインをこれから楽しみたいと思っている20代、30代の方に向けて、何かアドバイスはありますか? これはおそらく過去の自分に向けてのメッセージでもあると思うのですが。例えばもっとこうしておけば良かった……という失敗談でもかまいません。

須賀:やっぱり、今振り返っても覚えてないワインがとても多いので……分からないなりに飲んだワインでも、しっかり品種とか産地をメモしておけば良かったなって思っています。それをストックしておいたらかなりの情報量になったかと。

瀬川:たしかに、昔はお店で気軽に写真をとったりするような時代ではなかったから、記録するのは大変でしたよね。今はスマホで簡単に写真が撮れるし、記録用のアプリもあるし、ネットですぐに調べられるし、本当に便利な世の中になりました。

須賀:ぜひ便利なツールを最大限活用して、ワインの体験を残してほしいですよね。

瀬川:私は品種や産地やヴィンテージ以外にも、「どこで飲んだか」とか「誰と飲んだか」もなるべく記録するようにしています。

例えばレストランに再訪するときも、前に訪問した時に飲んだワインが分かればソムリエさんとの会話も盛り上がるし、ワイン会で久しぶりに会った方と話す時も、前に一緒に飲んだワインを覚えていたら相手も嬉しいと思うんです。これはビジネスとかでも使える技じゃないかと思います。

近藤:先日、ワインショップのエノテカにいった時、スタッフさんに教えていただいたんですが、ワイン情報をチェックしたり、飲んだワインを記録できるアプリがあるとのことでした。そういうワイン関連のアプリを試してみてもいいかもしれません。(※エノテカ公式アプリはこちら)

須賀:そうですね。早速ダウンロードしてみたいと思います。

今回ワインについて色々とお話してみて、間違えを恐れず自由に表現していいんだという自信がつきましたし、もっと自由にワインを楽しみたいという気持ちになれました。エンジョイしながら勉強もしっかり頑張りたいと思います。

瀬川:良かったです。ナパ・ヴァレーも近い将来みんなで行きたいですね!

(完)


後日談

須賀:昨年の4月からワインスクールに通い始めました!

やっぱりちゃんと勉強してみたいと思い、ワインエキスパートの資格に挑戦するつもりです。ワインショップに行って、ラベルを見ると「聞いたことはある」くらいの知識だったのが、意味まで理解できて楽しくなっています!

また、このインタビューでいただいたアドバイスにもあったのですが、ワインを自由に楽しむというのはすごく自分の中でしっくりきて、あまり知識にとらわれずラフな気持ちで楽しめるようになりました。

自分がおいしい、好きと思えるワインにたくさん出会いたいと思っています!


フードデザイナー、フードスタイリストとしてご活躍! 須賀いづみさんのInstagramのアカウントはこちら

前回と今回のゲストトークで話題になった「マリアージュ」と「ワインの表現」については、別の連載の中でもテーマとして取り上げています。ぜひご覧ください。

須賀いづみさん

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