皆さんはワインを勧められて、飲んだ後に「どう?」なんて聞かれたら、何と答えますか? 実は、ワインの香りや味わいには「独自の表現」があるのです。
今回は、香りや味わいの表現の仕方について、ワインスクールの講師も務める専門家である瀬川あずささんに伺いました。
ワインの香りや味わいの表現
ワインの大きな魅力の一つが、香りや味わいの多彩さ。それらを的確に表現できたらカッコイイですよね。しっかりテイスティングの訓練をすれば、もちろん表現力は磨かれますが、基本、ワインは自由に楽しむもの。香りや味わいをどう感じるかは、人それぞれなので、まずは思ったことを素直に表現してみましょう。
ここで大切なポイントはネガティブな表現をしないこと。感じたことを素直にポジティブに表現しましょう。難しいコメントは必要ありません。
例えば、「酸っぱい」、「渋い」、「味が薄い」といった表現はワインを美味しく感じさせず、周りの人のテンションも下げてしまいます。
今の言葉を「酸がフレッシュで凛としている」、「タンニン(渋み成分)が豊か」、「穏やかで優しい味わい」と言い変えてみると、ワインを味わうときのワクワク感が広がってきませんか?
是非、ワインの良いところを見つけて、前向きな表現を心がけてみてください。
知っておきたいテイスティングのアプローチ
例えば、レストランで目の前のグラスにワインが注がれたとき、手に取った瞬間、すぐに飲んでしまっていませんか?
ワインで大切なのは実際に味わう前に、外観や香りもしっかり楽しむこと。
飲みたい気持ちをぐっとこらえて、その美しい色調を愛で、香りを楽しむ時間を持ってから、グラスを口に運ぶようにしてみましょう。
ここではワインを飲む時に実践したい3つのステップをご紹介したいと思います。
ワインを飲む時に実践したい3つのステップ
ステップ(1)外観を眺める
ワインの魅力の一つが、その豊富な色彩バリエーション。赤、白、ロゼはもちろん、黄ワインやオレンジワインと呼ばれるものもあるほど、多種多様な色調が存在します。
さらに同じ赤ワインでも、濃かったり淡かったり、ややレンガ色がかっていたりと微妙な色の違いがあるのです。そこから読み取れる情報は様々で、使用品種はもちろん、ワインが若いのか熟成しているのか、育てられたエリアが温暖なのか冷涼なのかといったことまで推測するヒントになります。
その美しい色彩を愛でながら、いつ、どんなところでブドウが育てられてきたのか……その背景にひろがるシーンをイメージしてみましょう。
ワインの外観を表現したいときは、「キレイな色調ですね」「鮮やかですね」「輝きがありますね」と、目に映ったものを自由に再現すればOK。
熟成すると、赤ワインならレンガ色っぽく、白ワインは琥珀色っぽく変化してくるので、そんなワインに出会ったら(うっとりグラスを眺めながら)「熟成のニュアンスが感じられますね」とコメントしてみてください。
ステップ(2) 香りをとる
外観の次は香り(“アロマ”と呼びます)を楽しむ番です。ワインには様々な香気成分が含まれていて、一つ一つ分析するにはある程度の経験が必要。まずは、第一印象でどんな香りが感じられたかを大切にしてみましょう。
分かりやすいのはフルーツの香り。白ワインだったらカンキツやリンゴやトロピカルフルーツ、赤ワインだったらラズベリーやカシスやダークチェリーがよく使われる表現です。
それらの香りがしっかり感じられたら「フルーティーな香り」と表現できるし、バラやスミレなどお花の印象が強かったら「フローラルな香り」、胡椒やシナモンを感じた時は「スパイシーな香り」と表現できます。
ワインは熟成してくると、土やキノコなど大地を思わせる独特の香りを帯びてきます。そうした香りを特別に「ブーケ」と呼び、「熟成由来のブーケが感じられますね」などと表現します。
更にちょっといいワインに使えるのは「複雑」というワード。グラスにそっと鼻を近づけ、ゆっくり丁寧に香りをとり、「複雑なアロマですね」と一言口にすれば、あなたはもう立派なワイン通に見えるでしょう。
ステップ(3) じっくり味わう
さて、いよいよワインを味わう時がきました。ゆっくり液体を口に含み、舌の上で少し転がすようにしながら、果実味や酸味、アルコールやタンニンのボリューム感、余韻の長さなどを掴んでいきます。
とはいえ、あまり考えすぎず、自分の感性やインスピレーションで美味しいと思えることが大切。
パワフルでボリューム感のあるタイプはフルボディ、軽やかなタイプはライトボディなどと言われますが、どんなスタイルにせよ、ワインの持つ各要素のバランスが取れていれば、心地よく楽しむことができるでしょう。
そんな時は「バランスが良いですね」と言ってあげるのがベスト。熟成して円熟味を帯びてきたワインにも使えます。ちなみに「飲みやすい」という言葉はポジティブなイメージもありますが、高級ワインに使ってしまうとちょっとチープな印象になってしまうので注意が必要です。
いかがでしたか? ワインの表現方法について幾つかご紹介させていただきましたが、実際にワインを楽しんでいるときに、無理をして難しいコメントを言う必要はありません。
外観、香り、味わいの3ステップでワインを楽しみ、ひとこと気の利いた表現ができれば、それでもう十分。ウンチクは語らずとも、満面の笑顔で「美味しい」という気持ちを伝えれば、それが最上級の誉め言葉になるはずです。
香りや味わいを楽しめるオススメワイン!ソーヴィニヨン・ブラン
クラウディ・ベイ ソーヴィニヨン・ブラン Cloudy Bay Sauvignon Blanc
・生産者:クラウディ・ベイ(Cloudy Bay)
・産地:ニュージーランド マールボロ地区
ニュージーランド南島のマールボロ地区。見渡す限りブドウ畑が広がり、羊がのんびり散策している天国みたいなこのエリアは「ソーヴィニヨン・ブランの聖地」とも言われている、ニュージーランドを代表する銘醸地です。ソーヴィニヨン・ブランは同国を代表するワイン用ブドウ品種。
このブドウから、フレッシュなグレープフルーツのような果実味と酸、目が覚めるようなイキイキとしたハーブ香に、トロピカルフルーツのアロマが加わった、華やかなワインまれるのです。
「ワインの香りや味わいの個性がつかみにくい」という方も、この鮮烈な1本に出会えば、その魅力の虜になってしまうはず。
(編集部)
「熟成のニュアンスが感じられますね」とか「熟成由来のブーケが感じられますね」などはなかなか出ない言葉ですが、自然と出るようになりたいですね。
瀬川さんのアドバイスのように、無理をして難しいコメントを言う必要はないのです。
前回のマリアージュを参考に料理に合うワインを一口飲んでみて、表現を考えてみることから始めましょう。「うまいなあ」だけは極力避けて!
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