ワインを楽しんでみたいけど、ちょっと敷居が高い……そう感じている方、とても多いのではないでしょうか。私もワインを学ぶ前の20代前半の頃はそうでした。
でも大丈夫。知識があろうとなかろうと、私の周りのワイン女子のみなさんは、様々な方法でワインを日々エンジョイしているようです。
彼女たちがどんなキッカケでワインを好きになり、今はどんな楽しみ方をしていて、どんな悩みや疑問を持っているのか。インタビューを通じて皆さんのリアルなワインライフを探ってみました。
前回に引き続き、インスタグラマーであり、モデルやコスメコンシェルジュとしても活躍されている垰(たお)智子さんにお話を伺いました。前回はこちら
聞き手 瀬川あずさ 近藤淳司(編集部)
「どんな素敵なワインに出会えるのかが今から楽しみです」
情報に惑わされすぎない
垰智子さん(以下、垰):よく疑問に思うのが、「金賞受賞!」っていう札がついたワインが店頭にあって、そういったものも買ってみることもあるのですが、自分にとってはイマイチで。そういう賞を取ったワインって本当にすごいんですか?。
【垰智子さんのInstagramのアカウントはこちら、Twitterアカウントはこちら】
垰智子(モデル/コスメコンシェルジュ/インスタグラマー)さんのプロフィール
国立大島商船高等専門学校を首席にて卒業後、船会社に就職。スカウトをきっかけに読者モデルとして活動後、フリーモデルとして現職に至る。20歳の頃からワインにハマり、船で世界を回りながらいろんな国のワインやリキュールを飲む。ここ数年はビールにハマっていたが最近、またワインにハマりそうな予感。
瀬川あずさ(以下、瀬川):そうですね……。その賞を与えている評価機関も本当に色々なところがあるので、その金賞をどこが与えているのかをちゃんとチェックしたほうがいいかもしれません。
DWWA(デキャンタ・ワールド・ワイン・アワーズ)(※1)や、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)(※2)のような世界的なアワードで評価されているワインはもちろん素晴らしいものが多いですが、それ以外にもさまざまな団体がさまざまな賞を与えているので、すべての受賞ワインが同等のクオリティーとは言えません。だからあまりそういったものに惑わされる必要はないかもしれませんね。
垰:そうなんですね。意識しておきます。「あなたの嗜好だったら、この品種のこの産地がオススメ」っていうものが明確に出ていたら分かりやすいんですけれどね。
瀬川:おっしゃる通りで、初級クラスの受講生にはよく「好きな品種や好きな産地を見つけると、ワインセレクションしやすいですよ」とお伝えしています。特に「品種」から入ると一番分かりやすいかもしれません。
智子さんの場合、重たい赤があまりお好きではないと以前言っていたので、カベルネ・ソーヴィニヨンのような重厚なワインを造る品種よりもピノ・ノワールのようなエレガントなスタイルを生む品種のほうが向いているかもしれません。
垰:なるほど。そうかもしれません。
瀬川:それでピノ・ノワールを探して飲んでみて、例えばその産地がブルゴーニュで「いいな」と思ったなら、今度はニュージーランドやカリフォルニアなどの違った産地を飲んでみるんです。そこでカリフォルニアがいいなと思ったら、今度はカリフォルニアの違った品種にトライしてみるとか……。
そうやって、好きな品種や産地を少しずつ模索していくのがいいのではと思います。もちろん失敗もあるかもしれませんが……。
垰:そうですよね! そうやって少しずつ覚えていくのが大切ですよね。ただ、飲んだ時にすごく感動しても、酔っていて次の日につい忘れてしまったりするので、ちゃんと記録しておかなくっちゃ。
昔はレストランでよくラベルも剥がしてもらっていたのですが、最近はそういう習慣もなくなってしまったので。
瀬川:記録しておくのは大切です。いまは気軽にスマートフォンで写真をとれますし、ワイン記録用のアプリも充実しているので、そういうのを活用するのも一手ですよ。たまに酔って写真を撮るのすら忘れてしまうこともあるのですが、記録さえ残しておけば、後でたいていのワインは調べられますから。
峠:はい、忘れないようにがんばります!
あと最近の悩みとしては、私が言っている表現が実際にすすめていただくモノと違うことが多くて。例えば、「辛口でフルーティー」と言っても、出てきたワインが思った以上にサッパリしていてイメージしていたものと違うなぁと感じたり、予想以上に甘口だったり。おそらく私の表現が曖昧なんでしょうけれど、やっぱり伝えるって難しいなと思います。
瀬川:「辛口」や「甘口」の表現は人によって結構ブレがあると思います。よく白ワインのボトルの裏に辛口~甘口のどのあたりの味わいなのか、マトリックス表がついていることもありますけれど(※3)、アルコールの高さや酸のボリュームなど、さまざまな要因で、甘さの感じ方には差がありますね。
峠:そうですよね。私もボトルの裏の表記と同じ印象を持たないことがあります。
瀬川:それならば、あまり裏の表記は気にしなくていいかもしれませんね。好きな品種や産地を模索していく過程で、それぞれのスタイルや個性が見えてくるはずですから、自分の舌や経験で統一性を掴んでいって、「自分自身のデータベース」をつくっていったほうがいいと思います。
垰:分かりました! どうしても宣伝文句や色々な表記に流されてしまう傾向にあるのですが、自分の指標をしっかり確立して、お気に入りを見つけられるように頑張ります。
編集部 近藤淳司(以下、近藤):イメージしたワインを伝えるのが難しいという悩みはよく分かります。一つ提案ですが、どこかお気に入りのワインショップのお気に入りの店員さんを見つけて通ってみるというのは、手かもしれませんね。やはり初対面では、いくらプロとはいえ、相手のイメージしているものを正確に掴むのは難しいだろうと思います。
ある程度通って、色々な話をしていくうちに、店員さんも好みや予算や表現のクセなども理解出来てきて、きっと垰さんの良いアドバイザーになってくれるのではないかと。
垰:そうですよね。なんとなく専門店で店員さんと話すのに尻込みしてしまいがちだったのですが、勇気をだして一歩踏み込んで、ワインの相談をしてみます!
ワインで日々の暮らしに潤いを
瀬川:ワインって色々と難しさを感じたり、ハードルの高さを感じたりすることもあると思うのですが、それでも週一ペースでワインを楽しむのは、ワインのどんなところが魅力だからですか?
垰:奥が深くてわからない部分も多いのですが、そこもミステリアスで魅かれるし、ワインを味わっているとちょっと大人な気分にさせてくれるからです。
瀬川:なるほど! あえてちょっと背伸びをしてワインを楽しむ時もありますか?
垰:そうですね。まさに20代前半の時にワインにハマったのも「大人になりたい」という思いもあったからだと思います。今でも、気持ちを上げたい時にワインを飲みますし、実際楽しむと、大人ならではの嗜みを満喫している気がして、嬉しいですよね。
瀬川:そう、ワインはとっつきにくい部分もあるかもしれないですけど、「ワインを飲む」っていう行為自体がモチベーションを高めてくれることってあると思うんですよね。スパークリングワインなんて特にそう。
だから、ワインの知識は後回しでも良くて、「ワインを飲んでいると気分があがる」とか「大人になった気がする」とか、そういう楽しさからワインに入るのもアリなのではないかと思います。
垰:スパークリングワインも自分にとっては難しいお酒で、なんとなく味わってしまうことが多いのですが、楽しむだけで幸せな気持ちになります。その時に乾杯して楽しかった思い出が強く残っていると、そのワインが自分の好みだった気がしてしまって、ついシーンに流されてしまうのですが(笑)
瀬川:スパークリングワインは楽しいシーンを更に盛り上げるためのお酒でもあるので、楽しかった思い出の影響を受けるというのは、素敵なことだと思いますよ。
垰:女子力もあがりそうですしね。
瀬川:そうなんですよ! レストランで女性達がビールやハイボールで乾杯している姿ももちろん楽しそうでいいですけど、シャンパーニュのグラスを手にしているだけで、なんだか大人の女性に映る気がしませんか?
自己満足かもしれませんが、ワインって女性を素敵に演出してくれるツールになると思うんですよね。
垰:それはありますね。やっぱり外食するときってワインが飲みたいなと思うし、ワインを飲もうと思ったら、服もドレッシーなものを選びますし。居酒屋でビールと焼き鳥っていったら、カジュアルなスタイルになりますけど……。
同じ焼き鳥屋さんでもワインと合わせて楽しむようなお店だったら、ワンピースにしてみるとか、オシャレにより気を使うようになりますね。
瀬川:そう、ワインってファッショナブルなアイテムでもあるんです。例えば、智子さんは特にインスタグラムで色々な発信をされてますけど、写真の背景にちょっとワインが入るだけで華やかさや優雅さや大人っぽさが演出できると思うんですよね。
垰:それはすごく分かります。(新型コロナウイルス感染症対策における緊急事態宣言中の)自粛期間中で家にこもっていて、でも気持ちを上げたいな……っていう時には、お気に入りのグラスでワインを飲むだけで、なんだかウキウキした気分になれたんです。
どこにも行かず家で飲むだけなのに「髪の毛アップにしてみようかな」って思ったり(笑)
瀬川:素敵! そういうのいいですね。おうち時間が長くなって、どこにも行けずストレスが溜まりがちな今こそ、ワインが必要なのかも。
ワインと触れ合う時間を大切に
垰:今日お話しして、色々な気づきがありました。好きな品種や産地を見つける大切さだったり、行きつけのお店と良きアドバイザーの必要性だったり。そして、ワインは気分もアガるお酒だというのは納得でした。
あとは、飲んだワインをしっかりメモしようと今更思いましたね。若い時、あれだけの量を飲んでいたのにもったいなかったなって(笑)
瀬川:みなさんそうおっしゃるんですよね。智子さんは、今からでも十分間に合いますよ。
近藤:そうですよ、これからです。さて最後にうかがいたいのですが……ワインをこれから楽しみたいと思っている20代、30代の方に向けて、何かアドバイスはありますか?
垰:先ほどお伝えしたように、メモしたほうが良かったというのが一つと……あとは飲みすぎないように節度をもって楽しめば良かった、ということですかね(笑)
瀬川:そんなにたくさん飲まれていたんですね!
垰:そうなんです。船会社にいた時は、行きつけのレストランがあって、船乗りのお友達と毎日のように飲みにいってたんですよ。船乗りさんって豪快に飲む方が多くって、店員さんがビックリされるくらいワインを空けてましたね。
瀬川:船乗りさんって確かに飲みそう。普段船上にいるからこそ、「陸を謳歌しよう」と思いますもんね。
垰:おっしゃる通りで。そんな皆さんのペースで飲んでいたら、やっぱり飲みすぎてしまって……。ワインを飲みすぎてぐったりしていたら、仲間に「箸休めにシャンパン飲んだほうがいいよ」ってすすめられるんです。それで合間に泡を飲んでみたのですが、今考えたら、もちろん全然箸休めなんかにならないですよね……。
瀬川:シャンパーニュで箸休めって(苦笑)さすがです。
垰:結局何を飲んだのかも覚えていないし、次の日にお酒がのこって二日酔いはひどいし……それで一度ワイン離れをしてしまったことがあったんです。そういうのって本当にもったいないので、節度をもって楽しめばよかったと後悔しています。
瀬川:若いうちはどうしても、そんな飲み方をしてしまうことってありますよね。振り返ればそういう経験もきっといい思い出になるし、成長していく過程としては無駄ではないとおもいます。失敗があったからこそ自分の成長を実感できるというか(笑)。
でもワインを学び始めて香りや味わいをしっかり意識するようになって、生産者の哲学を知ると、次の日に響くような飲み方ってしなくなるんですよね。
垰:そう、若い時はノリの良さって場合によっては必要かもしれませんけど、体調と相談しながら、自分のペースでワインを楽しむのが一番だと痛感しています。あとは……ワインと触れ合える時間を大切にして、楽しみながらお気に入りを発見していけたらいいですよね。
瀬川:ワインを味わう時間を特別に思えるって、素晴らしいですよね。それだけで日々の生活がスペシャルになりそう。
垰:本当に! 私もこれから好きなものを少しずつ発見していきたいです。どんな素敵なワインに出会えるのかが今から楽しみです。
(完)
後日談
垰:実際にお店でソムリエの方に好みを聞かれる事があった時に、あずささんとの会話を思い出し、ピノノワールでお料理に合うワインをご用意して頂いたり、スマホで写真に残してみたりするようにしました。
実際に自分の好みのワインがわかるとよりワインが楽しくなり、次はどんな味のワインに出会えるんだろうとわくわくが増しました! ただ飲むだけではなく味わって飲むことで、産地や品種などワインの知識も広がっていけて、自宅で飲むときのワインなどの選定にも役立ちそうです。
モデル、コスメコンシェルジュ、インスタグラマーとしてご活躍! 垰(たお)智子さんのInstagramのアカウントはこちら、Twitterアカウントはこちら
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