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韓国ウイスキー蒸留所 スリーソサエティーズ編(9)

ウイスキージャーナリスト住吉祐一郎氏による韓国初モルトウイスキー蒸留所「スリーソサエティーズ」のレポートを、実際の取材映像と住吉氏の取材記でお届けします。(編集部)

住吉祐一郎の蒸留所訪問 韓国スリーソサエティーズ編(9)

国際的なウイスキージャーナリスト住吉祐一郎氏による
韓国初となるウイスキー蒸留所『スリーソサエティーズ』のレポートシリーズ(9)です。

マーケティング スペシャリストであるユービン・キムさんにインタビューしながら

  • 韓国の木材を使用した樽と、韓国独特とも言える赤トウガラシの味わいについて
  • カスクオーナープログラム 今後の販売について

と、最後に住吉氏のまとめコメントを紹介していきます。

住吉祐一郎さんの取材記も併せてご覧ください。

動画は音量0でもご覧いただけます。

住吉祐一郎の取材記(9)

 スリーソサエティーズの貯蔵庫で熟成されている樽には、「ワソン」と呼ばれる韓国の木材を使用したものがあって、通常使用されるバーボン樽などとは異なる味わいを醸し出すそうです。そのひとつが、ピート(泥炭)を炊いたようなスモーキーさです。通常、ピートは麦芽を乾燥させる工程で炊き込んで香りを付けますが、このワソンという木材から作った樽は、ピートを使用していない原酒を入れて熟成させても、ピートらしい香りが付くのだそうです。一体、どのような香りがするウイスキーに仕上がるのか、とても気になるところです。

 そしてワソンのもうひとつの特徴は、韓国独特とも言える赤トウガラシの味わい。ピリッとした辛味が特徴のウイスキーに仕上がるということです。ピーティーでペッパリーなウイスキー。人によっては好き嫌いが分かれると思いますが、個人的には非常に興味をそそられるものでした。

 そして更に興味深い樽の使用法として、樽の中に韓国の赤トウガラシを入れておくのだそうです。これはウイスキーを入れた樽にトウガラシを入れるのではなく、空の樽にトウガラシを入れて一定期間置いておくと、樽にトウガラシの香りが付くということです。その後トウガラシを取り出してからウイスキーを入れて熟成させると、ペッパリーでスパイシーなウイスキーに仕上がるそうです。これまでに聞いたこともないようなアイデアに、本当に驚かされました。

 スリーソサエティーズでは、樽を販売するカスクオーナー・プログラムも始まっていました。法律的な規制や税金の問題などがあるため、販売は韓国国内のみということでしたが、将来は国外への販売も視野に入れているそうです。

 そしてちょうどこの記事を書いているとき(2023年4月21日)に、スリーソサエティーズのシングルモルト「KI・ONE:BATCH 1」が日本でも発売されました。
KI・ONEは同蒸留所初となる一般向けのシングルモルトです。早速試飲してみましたが、アルコール度数は加水により40%に落とされているため、正直なところ、少しもの足りない気がしました。というのも、現地で飲んだウイスキーは加水なしのものだったため、その時の印象が強かったからです。とはいえ、味わいは円やかでスムース。ハチミツのような甘さとフルーティさは健在でした。ストレートでゆっくりと味わうのが良いのではないかと思いました。今後、加水なしのカスクストレングスも販売されることを期待したいと思いました。

 さまざまな種類の原酒を造り分け、樽にも工夫を凝らしながら、韓国らしさを感じさせることができるようなニュースタイルのウイスキー造りを目指すスリーソサエティーズ蒸留所。
取材に行くまでは、韓国でのウイスキー造りに対して懐疑的でした。どの程度しっかりとしたウイスキーを造っているのだろう。製造機器はどんな感じだろう。造り手の知識や技術は、とさまざまな考えを巡らせながら訪問したのですが、ピカピカの蒸留所内に入り設備機器を見た瞬間に、その考えは消え去ってしまいました。

 そしてシャンド氏やユービン氏からの話を聞き、出来上がったばかりのニューメイクスピリッツや熟成中のウイスキーを飲んだとき、これは将来すごい蒸留所になるに違いないと確信しました。その理由は動画をご覧になるとお分かり頂けると思いますが、シャンド氏が語っていた、Never stop learning. Never stop exploring. 「学ぶことをやめないこと。挑戦することをやめないこと」という言葉が特に印象的でした。
 まずは発売されたばかりのKI・ONEで、スリーソサエティーズのこれからのウイスキー造りに乾杯したいと思います。Slainte!


いかがでしたでしょうか。9回に渡ってお届けした「韓国スリーソサエティーズ蒸留所」の取材記。
韓国初となる本格的なウイスキーの誕生に、取材された住吉さんもそのクオリティの高さに驚き、期待を寄せています。
当サイト、プラグインアーツ・コネクトでは今後も、ウイスキーファンや、ウイスキー初心者の方に、蒸留所のレポートをお届けしていきたいと考えています。
それぞれの蒸留所が持つ独自の魅力が生みだすウイスキーの数々。それを楽しみながら飲んでもらえたらと思っています。(編集部)


住吉祐一郎氏の書籍紹介

ウイスキーに、誘われて
〜英語で旅するバーテンダー(ニュージーランド・カードローナ蒸留所編)〜

住吉 祐一郎/著  近藤淳司/編集 

プラグインアーツパブリッシング
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