今回は、外食産業に勤務する全サービスマンに伝えたいことがあります。
お客様側から絶対出ない意見だと思いますので、是非参考にしてください。
※以前のバーテンダーの接客についての記事「良い飲食店の格が下がるその瞬間vol1」はこちら
飲食店の格が下がるその瞬間
一緒に食事をする人に合わせてお店をどこにするか検討しますが、私が話し込んだりする時に使うお店があります。
そこで2人で食事をしていた時のことです。
そのお店は知り合いのお店で、料理は本当に文句なしで美味しいのですが、接客で気になることがありました。
ある程度お酒が入ってきて、話が弾んできた時に、注文していたお刺身5点盛りが運ばれてきました。
そして、アルバイトスタッフが醤油とお刺身をテーブルにそっと置いた時のことです。
アルバイトスタッフは、「こちらは長崎県産のヒラメ、こちらは福岡県産の鯛、こちらは、佐賀県産の鰤…」と説明し始めました。
私達は盛り上がっている会話を中断し、そのアルバイトスタッフの商品説明を聞いて、「で、何の話でしたっけ?あー!でね!」という感じで会話を再開しました。
何が起こったかお分かりですよね?
そう、盛り上がっている会話を強制的に遮られたんです。楽しく会話していたところに割り込まれた感じです。
これって結構ストレスで、特に目上の方と会食している時なんて、「おいおい!」ってなります。
高級店になればなるほど、商品を丁寧に説明(付加価値をあげよう)とする接客の傾向が強い。
そのアルバイトスタッフは、店主の指導のもと一生懸命説明していました。
その子は何も悪くないですし、店主側も良かれと思って指導をしているはずです。
私も飲食店を経営していますし、現場に立っていた時は、同じ事をやっていましたので、アルバイトスタッフや店主の気持ちはよーくわかります。なんなら、ちゃんと聞いて欲しいくらい思っていました。(笑)
ただ、ここでの問題点は、お客様側が求めている接客と店側が考えた良い接客に乖離があったということです。
間違いなくあの瞬間、顧客満足度は下がりましたし、空気を読むという点においては、店側の接客は、NGだったと思います。
付加価値の見直しが必要
見直しのポイントは、
- 説明方法として、言葉で伝えることが最適なのか?
- 店側のこだわりを理解できる(伝わる)お客様なのか?
の2つがあると思っています。
言葉での説明が最適解なのか?
アルバイトスタッフは、商品についてきっちり説明をしていました。
確かに、どのお刺身がどの魚なのかは説明を聞かないと、素人にはわかりません。
ですが、お客様の盛り上がりを抑制してまで、説明すべきことだったのかは疑問が残ります。
盛り上がっていた会話を遮られた側からすると、
「会話の続きを記憶しておくこと>商品説明を聞くこと」
と、優先度が違うので、覚えきれない場合も少なくない。
結果的には、商品を一生懸命説明したあの時間に、価値はなかったことになります。
では、どうすれば良かったのか?
改善方法としては、お刺身の横に魚の種類を説明した札を置いておけば、お客様満足度を下げることなく、商品を説明できたはずです。(説明札の活用)
焼肉店に行くと、たまにお肉の皿に食材を説明する札が写真のようについていたりしますよね(肉札)。
お刺身の盛り合わせなどにも、説明用の札をつけることで、より解りやすく効果的だと思います。
飲食店側からすると、ラベルのコストがかかるので悩ましいところですが、何が重要なのか考えれば答えは出るはずです。
今回の場合、お刺身が例になっていますが、他の商品でも同様で、
「いかに自然に商品を説明できるか?」については、見直しが必要だと感じています。
店側のこだわりを理解できる(伝わる)お客様なのか?
アルバイトスタッフの「長崎県産のヒラメです」
という説明に焦点を当ててみましょう。
どこかよくわからない産地の魚より、産地が記載されている方が美味しそうとは感じますが、その説明そのものの付加価値が高いかと言われると実態はそうでもないと思います。
理由は、ヒラメの食べ比べをしたことがないからです。というか、毎日刺身を食べる人の方が少ない。
プロ目線では、「この産地が美味しい!」とわかりきっていても、素人からすると、日常的に食べている食材(トマトとか)でない限り、基準がないので比較しようがないんですね。
結果、美味しい食材でも商品の良さが100%伝わらない。
今回のお刺身でいえば、ほとんどの人が
「身が締まって歯ごたえがある=新鮮」
「身が柔らかい=熟成」
と捉えているくらいが実態だと思います。
説明による満足度向上を目的とした場合、提供側とサービスを受ける側の知識・経験が違うので、サービスを受ける側のレベルに合わせない限り、伝わるモノも伝わりません。
なので、説明する内容をお客様が理解・共感しやすい表現へ変化させる必要があります。
場合によっては、メニュー表から見直しをした方が良いかもしれません。
どのお店でもオススメの一品はありますので、その一品で、お店のスタンスやこだわりが伝わるような施策が必要だと思います。
商品価値の説明も含め丁寧な接客が必要
商品価値の伝え方について触れてきましたが、一方で、養殖の技術の向上や物流システムの発展に伴い、現地でしか食べられないものは少なくなりました。
またYouTube等のWebやデジタル技術の進歩により、調理技術のレベルもコモディティ化(※)してきています。
どこのお店でも美味しい料理が食べられますし、不味いと感じるお店の方が少ないと思います。
幸せな時代だと思いますが、商品価値の加点より減点の方が目立つようになり、商売人目線では、厳しい時代になりました。
ぶっちゃけ本当に美味しい料理だけで感動の閾値を超えた場合、お客様側が話を中断して、店員を呼び止めて聞いてきます。
「声に出して反応があった」それ以外は、商品の価値そのものに大きな差はないはずです。
手厳しい話ですが、それが現実だと思います。
何をどこまで説明すべきなのか?
この判断は、店の状況やそのお客様に合わせて伝え方を変化させる必要があります。
めちゃくちゃ高度なコミュニケーションスキルです。
商品価値に大きな差がない場合、商品以外での満足度を向上させる戦略的な接客施策が必要です。
バーや鮨屋など、カウンター主体のお店の場合、お寿司を手渡ししたりなど、自然に会話を中断させる環境を作ることができます。
この一瞬の「間」をどうコーディネートするかが顧客満足度に直結しそうです。
商品そのものも大切ですが、商品価値を最大化するための事前のコーディネート力が、外食産業には求められていると思います。
※コモディティ化
コモディティ化とは、製品やサービスについて、性能・品質・創造性・ブランド力などに大差がなくなり、顧客からみて「どの会社の製品やサービスも似たようなもの」に見えるようになった状況、を意味するマーケティング用語 (ウィキペディア)
【お知らせ】 この記事をご覧の皆様に、投稿者 福岡さんのお店「BAR DEEP」よりお知らせです。
BAR DEEP 店舗情報
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BAR DEEP オフィシャルサイト
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日・祝日…21時〜3時30分
※営業日については、Instagramにて確認ください。
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