MENU

バーテンダー 日本チャンピオンの称号とこれから

バーテンダー 日本チャンピオンの称号とこれから

前々回の投稿『良い飲食店の格が下がるその瞬間』では、バーテンダーの接客のことを書きました。今回は、バーテンダーの大会に関するお話から始めたいと思います。

『バーテンダーの大会』とは

『バーテンダーの大会』
初めて耳にする人も多いとは思いますが、BAR業界では、カクテルを作る技量や知識を競う大会が定期的に開かれています。

大会も様々ありますが、大きく分けると、協会が主催する大会(例:日本バーテンダー協会等)と飲料メーカー(サントリーやアサヒビール等)が主催で開催される大会の2つに分けられます。規模は国内だけで終わる大会もありますが、日本代表として世界大会まで進むような大会もあります。※下記参考情報

バーテンダーの技術が年々向上していることや、大手飲料メーカー等酒類のラインナップの増加等により大会で勝ち抜くことは、非常に難しくなってきている実態があります。

続出する日本チャンピオン

大会が開かれる以上、毎回優勝者が出ます。
私もこの業界に入って3年目くらいの時に、とある飲料メーカーが主催したカクテルの大会で全国大会へ行きました(めちゃめちゃ緊張しましたw)。

以前はそこまで大会の数は多くなかったと認識しておりますが、現在では、各メーカーごとはもとより、商品ごとに大会が開催されてきている風潮があります。
なので、大会の規模は大小ありますが、何かしらの大会が毎月のように開催されています。

仮に毎月大会が開催されたとして、1年間で12人の日本チャンピオンが誕生していることになり、10年で120人の日本チャンピオンが誕生します。地域差はあれど、このままいくと全国どこにでも日本一のバーテンダーが存在することになり、実際、そういう傾向になりつつあります。感覚的ですが、優勝者は関東の店舗出身者が多いようです。
※参照 : 第49回全国バーテンダー技能競技大会(BTSC)結果報告(一般社団法人日本バーテンダー協会)

BARを取り巻く環境と現状

大会へ出場するまでの努力が並大抵ではないことは重々理解してますが、同じスキルを持った人が増え続けるとなるとどうなるでしょうか?

メリットとしてBAR業界全体の技術向上や、美味しいものを飲める機会が増えていくので、ユーザーの満足度は上がる傾向にあると思います。

しかし、経営的観点から見れば、次のような課題も多くなっていきます。

『新規のお客様獲得が困難になっている』

  • 人口減少&若い人はお酒を飲まなくなってきている&スマホやゲームなど、新しい趣味はどんどん増え続けている。
    →1ヶ月遊びで使える金額には、上限がある。
    →さらに飲み会は数名以上の規模で、居酒屋などが定番。
  • スーパー、コンビニ等で購入できる大手飲料メーカーのお酒も年々美味しくなっている。
    →コロナ禍でプレミアムビールが増えたように『家飲み』が定着しつつある。
    →家飲みかアウトドアのシチュエーションのCMも多い。

『売上アップが難しくなっていく』

  • (全員が当てはまるわけではないが) 既にBARへ足を運ぶ習慣がある人のBARで使用できる金額は毎月同じ。
    →1ヶ月の飲み代には上限がある。
    →既存客だけでは売上が頭打ち。
  • 人間の心理的にも、新しい店ができたとしても馴染みの店に通う傾向が強い。
    →先行者利益は大きい。
    →新規店の集客がより困難に。

『限られたお客様に対して競合差別化が困難』

  • BARは、繁華街に集中しやすい傾向にある。
    →競合店舗の集中。
  • 同時に複数店舗を飲み比べるわけではないため、飲み物として差別化、比較が難しい。
    →食事とは違い1日三食口にする機会がないので、味覚的に比較、判断がしにくい。

とパッと思いつくだけでもこれだけ環境や外的要因の影響から来る経営課題が出てきていると思います。
血のにじむ努力をして日本チャンピオンの称号を得たとしてもリターンが、昔ほど大きくなくなってきていると感じています。

日常生活に例えると、スーパー等で、「限定品」と書かれた商品を見たことがあると思います。昔は、本当に希少価値が高く限定品だったと思いますが、どの企業も限定品を出すようになった為、(ものは良くても)限定品という価値そのものが薄まっている、そんな感じだと思います。
また、スポーツの世界でいうと、マイナースポーツの場合、優勝したとしても優勝賞金額が低かったり、その後のスポーツ人生が明るくならないという感じでしょうか。

これからのバーテンダーに求められるもの

どのBARもお客様へ丁寧な接客、美味しいお酒、快適な空間を提供していると思いますが、ある種コモディティ化※(消費者にとって、どこのBARにいっても大差のない状態)していきているので、差別化が難しくなっていると感じます。

BARは食中ではなく食後に行く店なので、どうしても、食事をしながらお酒を飲むお客様とは接点が少なくなる傾向にあり、心理的にも敷居が高く感じます。まあその敷居の高さがゆえに、秩序がある程度守られていることも事実ですが。

しかし、新しい飲み手(お客様)を増やす活動にもっと力を入れないと業界そのものが陳腐化していってしまいます。

私は日本一になったことはないので、私がこういう話をすることはおこがましく、またあるべき姿は、私も想像できておりませんが、価格を安くすることで集客したり、お酒のバリエーションだけに焦点をあてるのではなく、バーでお酒を楽しむという利用価値そのものを変化させるような取り組み、もしくは、BARの本来の価値を再評価するような活動が必要だと思います。

血のにじむ努力をして優勝したその先のビジョンやその称号を活かす環境作りも合わせて考えていくべきで、経営者、空間プロデューサーのような目線が必要になってきているのではないでしょうか?

副業が当たり前になってきている昨今、バーテンダーも経営者視点のもう一つの顔が必須になってきているのかもしれません。


バーテンダーの大会 参考情報

■世界で最も権威のある大会のひとつであるバカルディ レガシー カクテル コンペティション
https://www.bacardijapan.jp/event-news/2019/20191113-5071/
https://www.youtube.com/watch?v=9nIACyi2HvI
■世界最大級のバーテンダーコンペティション WORLD CLASS
https://www.wcjapan.jp/
https://www.youtube.com/watch?v=XtiZBSYnwFw
■国内最大級のカクテルイベント サントリー ザ・カクテルアワード
https://www.suntory.co.jp/wnb/event/award/
<サントリー・ザ・カクテルアワード 2021>
https://www.youtube.com/watch?v=EC14SRKaKBw

コモディティ化(英語: commoditization)とは、製品やサービスについて、性能・品質・創造性・ブランド力などに大差がなくなり、顧客からみて「どの会社の製品やサービスも似たようなもの」に見えるようになった状況、を意味するマーケティング用語

ウィキペディア

【お知らせ】 この記事をご覧の皆様に、投稿者 福岡さんのお店「BAR DEEP」よりお知らせです。

飲食店の明日をご覧の皆様へ。
当店へご来店の際に、「記事を見たよ」とスタッフへ言っていただければ、最初の1時間の飲み放題料金を25%OFFにてご案内させていただきます。
福岡いらっしゃった折には、是非お立ち寄りください。

BAR DEEP 店舗情報

■住所 : 福岡県福岡市中央区西中洲1−14 プロスペリタ西中洲6F

■営業時間 : 平日・金土・祝日前…21時〜4時30分
日・祝日…21時〜3時30分
※営業日については、Instagramにて確認ください。

■Instagram
飲み放題へのこだわりが日本一のBARです。
https://www.instagram.com/bar_deep_nishinakasu/
■お仕事や御相談などお問い合わせ
fukuhashi0101@fukuhashi.jp

バーテンダー 日本チャンピオンの称号とこれから

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

この投稿がよかったらシェアお願いします!
  • URLをコピーしました!

この記事に関するコメント

コメントする