飲食店を取り巻く問題を取り上げると星の数ほどあがってきますが、商社営業職、飲食店経営者、コンサルタントアシスタントという経歴から見えてきた課題感をこの記事でお伝えしていきます。
※このコーナーで定義している飲食店は、スナック、キャバクラ、バー等も含んでいます。
前回の講座「経営ビジョン メッセージの言葉づかい」では、伝えたい人に伝わる表現に変えていくことの重要性について解説しました。
今回は、実際に現場に行動指針を落とす時に、どこに注意すべきなのかを具体的な事例を交えて解説していきます。
今回取り上げるテーマは、
意思決定の基準の明確化
です。
1.意思決定の基準とは
まず、意思決定の基準とはどういうことでしょう?
人は何か行動をする時、「自分だったら、こう行動する!」と、それぞれに行動の価値基準のようなものを持っています。
それは育った環境や周囲の影響から、個人の考え方、そこからくる行動に「自分の基準」のようなものが生まれてくるからです。
同じように人は働く際に、その環境(業界、業種、会社、職場、同僚)から、何かを決定する際に「基準となるもの」が生じています。
簡単に言えば、
仕事でお客様と接する時、物事を企画する時、製品を作る時、
「我が社の社員は、こうする」
「我が社の社員なら、こう答える」
「我が社の社員は、こう考える」
といった、考え方、行動の基準となるものが必ずあるということです。
そしてそれは、その会社や組織、お店が、開業以来培ってきたもの。創業者の事業に対する考え方、お客様への姿勢とでも言っていいのかもしれません。
経営理念から、現場に行動指針を落とす時、この意思決定の基準というものが、非常に重要になってくるのです。
1-1. 意志決定の基準には余白(遊びの部分)を設ける
1つ目のポイントは、
意思決定の基準には余白(遊びの部分)を設け、個々に考えさせるプロセスを包括させる
ということです。
Z世代と向き合う上で欠かせない考え方が、この「意志決定の基準に余白を取り入れること」だと考えています。
体裁だけ綺麗で、現場が機能しない行動指針が多い理由は、この余白が考慮(設計)されていない行動指針になっているからだと思います。
いわゆる「こうあるべき論」でガチガチに固められた行動指針です。
まず、多くの会社の行動指針の現状の問題点について解説いたします。
2. 行動指針の実態との乖離
当然ですが、行動する時の基準となる指針を示したものが行動指針です。
ところが、多くの企業の行動指針は、
●細かく指針を示しているものの、細かすぎて、従業員が行動指針を意識しなくなる(無視する)
●綺麗なメッセージだが、従業員が、具体的な行動を想像ができない
という絵に描いた餅のようになってしまっている印象です。
結果的に、
社員は自社の行動指針を詠唱はできるけど、その通りに動いていない
ということです。
現場も
「行動指針通りに動きたいけど、日常業務にはそうは言ってられないことが沢山ある」
「言わんとしていることはわかるけど、なんだかんだ言って、売上・利益を上げないと、怒るでしょ?」
が本音です。
なぜ、このような状態になるのかというと、企業は法令(コンプライアンス)順守を前提として日々業務をこなしていますが、業務によっては白黒がはっきりせず、グレーな状態でステークホルダーと握りあって、進めていくことも往々にしてあるからです。
いわゆる「綺麗ごとばかりでは何とやら…」です。
結果的に、事細かに行動指針を設定しても、その通りにはならないことの方が多く、(人によって直面した課題感の大小はあれど)想定外の事だからこそ、判断ができなから動けないわけです。
そして、その結果、お飾りの行動指針になってしまっている。
ここで見直さないといけないことは、
基準をギチギチに決めてしまうわけではなく、指針だけを示して、当人達に考えさせる余白を持たせた基準を設定する
ということ。
例えば、仕事で日常起きる様々な事柄に対し
「我が社の考えからすれば、こんな異例なケースでは、こう対応しても良いのではないか?」
「指針とは若干ずれる行動だが、我が社のスタンスからは外れてないのでは?」
「我が社のお客様への想いから考えれば、この行動もアリなのかも」
などと、社員たちが自ら考えながら行動に結び付けていくこと。
まさに、前述した「意思決定の基準には余白(遊びの部分)を設け、個々に考えさせるプロセスを包括させる」ということです。
そもそも、基準を杓子定規に事細かに決めることには、無理があります。
ここを抑えない限り、絶対に血の通った行動指針になりません。
会社、経営側がうたう行動指針が、社員、スタッフたちによって、ブレることなく上手く肉付けされていく。
働く人達への行動指針には、
「我が社なら」「うちのお店なら」そして「そこで働く自分だから、こうする。こう言う。」という意思決定の基準を明確にし、さらに働く個々人がその軸をブレることなく、本人の裁量という余白を持たせて考えること。
が重要なのです。
次回は、この企業の行動指針を受け取る若い社員。Z世代についてお話しします。
■筆者 : 福岡裕記の記事紹介
本サイト「飲食業の明日」コーナーにて、福岡裕記氏による記事の中から、飲食店の経営課題に関連する記事をピックアップしました。
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