ウイスキージャーナリスト住吉祐一郎氏による韓国初モルトウイスキー蒸留所「スリーソサエティーズ」のレポートを、実際の取材映像と住吉氏の取材記でお届けします。(編集部)
住吉祐一郎の蒸留所訪問 韓国スリーソサエティーズ編(7)
国際的なウイスキージャーナリスト住吉祐一郎氏による
韓国初となるウイスキー蒸留所『スリーソサエティーズ』のレポートシリーズ(7)です。
この動画では、マーケティング スペシャリストであるユービン・キムさんにインタビューしながら
- 樽倉庫でのウイスキーの試飲
- ジンの試飲
- ジンの製造方法
を紹介していきます。
住吉さんの取材記も併せてご覧ください。
住吉祐一郎の取材記(7)
貯蔵庫で試飲したウイスキーは、とても興味深い味わいでした。スリーソサエティーズが創業して間もない頃(2020年7月30日)にアメリカンオークの新樽に入れて2年3か月熟成したものでしたが、新樽熟成の特徴であるタンニン感がしっかりと出ていて渋味を感じるのですが、同時にバニラ様の甘味もあり、キャラクターがはっきりとしていて、不思議に嫌味がありません。ひとことで言うと、バランスがいい、そんなウイスキーでした。
色味もはっきりとしていて、美しいマホガニー材のようでした。10~15年熟成のウイスキーと同等ではないかと思えるような感じです。シャンド氏が、スコットランドのウイスキーと比べて、ソウル郊外では熟成が5倍ほど早く進むと言っていた意味がよくわかりました。
夏は摂氏38度、冬はマイナス28度という60度以上もある寒暖差が、スリーソサエティーズの樽に独自の熟成を施しているのでしょう。熟成が進むにつれて、味わいがどのように変化して行くのかが気になるところですが、素敵なウイスキーが出来上がるのを気長に待ちたいと思います。
さて、ウイスキーの貯蔵庫には、シャンド氏が実験として試みていたジンもありました。そのジンはピート(泥炭)の風味を効かせたスモーキーなものでした。
少し口に含んだだけで、強烈な燻煙香が広がります。それもそのはず、このジンのベーススピリッツには、ピーテッドモルトから造られたニューメイクスピリッツが使用されていたのです。そこにボタニカル(※注1)を浸漬させて香りを付けたあとに、再び蒸留してジンが造られていました。
ジンといえば、ジュニパーベリー(ねずの実)ですが、このジンはピートの香りが強く、ジンらしいというよりは、まさしくピートを強調した仕上がりとなっていました。その後、アメリカンオークを使用したクォーターカスク(バット樽やパンチョン樽の約4分の1の容量の小樽:約125ℓ)で熟成されていて、ほんのりと色が付いています。
使用するボタニカルも、楓やライ麦、アップルシナモン、グリーンマンダリン、韓国のトウガラシなど、個性豊かなものが揃っています。
一般に向けて発売されるかどうかは未定ですが、ユービン氏の「誰も経験したことのない、誰も造ったことのないものに挑戦して行きたい」との言葉が印象的でした。将来どのようなジンに仕上がるのか、ウイスキーと共に今からとても楽しみです。
韓国ウイスキー蒸留所 スリーソサエティーズ編(8)では、ウイスキーの試飲と共に、バーボン樽、酵母などについて紹介していきます。
住吉祐一郎さんのインタビューも是非ご覧ください。
住吉祐一郎氏の書籍紹介
ウイスキーに、誘われて
〜英語で旅するバーテンダー(ニュージーランド・カードローナ蒸留所編)〜
住吉 祐一郎/著 近藤淳司/編集
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