飲食店を取り巻く問題を取り上げると星の数ほどあがってきますが、商社営業職、飲食店経営者、コンサルタントアシスタントという経歴から見えてきた課題感をこの記事でお伝えしていきます。
※このコーナーで定義している飲食店は、スナック、キャバクラ、バー等も含んでいます。
今回取り上げるテーマは、
パーパス策定時に必要なスタンス・考え方
です。
前回の記事で、Z世代とパーパス策定について解説いたしました。
今回は、パーパス策定にあたって重要なことや、ここは押さえておくべきというポイントについて解説していきます。
1. パーパス策定の考え方
経営のパーパスの策定において、重要なポイントは以下の3つです。
〇何がやりたいのか明確にする
〇難しい言葉を使わない
〇悩んだら壁打ちをやる
※壁打ちとは、「自分の考えや悩みについて相手に話し、それに対してフィーバックをもらう」こと。
この3つのポイント。
あたりまえのことを書いてますが、「言うは易し」とはこのことで、簡単に策定できるものではありません。
今後、パーパス策定を進めていこうと考えている経営者の方は、是非覚えておいてください。
1-1. 何がやりたいのかを明確にする
経営にとって至極当たり前のことですが、現在の経営を通じて「何がやりたいのか」ということを明確にしていくことは最重要の課題です。
私のお店で、実際どのようにして展開したのかをご紹介します。
当店のケース
私のお店の場合では、実はこれが一番大変でした。
手順として、まず私達経営陣も初めてパーパス、ミッション・ビジョン・バリュー(以下:MVV))を作成した為、言葉の定義がわかっておらず、各言葉の定義から調べました。
次に、言葉の定義や定義を説明した参考になりそうな記事をピックアップし、とにかく今、経営陣が考えていることを書き出しました。
その当時のメモ(書き出し)がこちらです。
出てきた課題
このメモをご覧いただければ分かると思いますが「言いたいこと」「やりたいこと」の方向性がバラバラです。
抽象的なものや具体的なもの。また全体的なことから個々人のことまで焦点がバラバラ。
このように、経営側でも「やりたいこと」が不明確な状況であれば、従業員、ましてやお客様からすると、より分からないのは当然です。
何よりも
会社としての「1つの大きな指針」
が無いのが問題です。
要は、マンガのONE PIECEでいう「海賊王に俺はなる」という御旗を掲げていなかったんです。
正確に言えば、「普段から想いや熱量を持って仕事をしていても、言語的に整理がされておらず、あれも大事、これも大事というようになっていた」という表現が正しいでしょう。
「会社としてどこを目指すのか?」「目指しているのか?」という大きなものが無いので、
応援する側であるお客様や、一緒に働く従業員も「何のためという指標がない」ということなのです。
「頑張れだけ言われても、なかなか頑張れない。」
従業員側、特にZ世代は、そう感じるのは当然です。
1-2. 難しい言葉を使わない
さらに、「何がやりたいのかを明確化する」ことにおいて重要なのは、難しい言葉を使わないということ。
経営側、従業員、そしてお客様。誰が聞いても解りやすい言葉で作成するのもポイントです。
前回の記事でヤフー株式会社様、トゥモローゲート株式会社様のMVVの策定例を紹介いたしましたが、まず初めに、MVV関連の言葉については、他にもCM等で見たことがある、記憶にある企業を調べました。
どの企業も良いことを書いてあるんです。
〇〇業界に貢献する!
豊かな暮らしに役立つ〇〇
挑戦と創造で人を幸せにする
AIと最新の技術で〇〇
など。
一見すると、心地良い響きの言葉であったり、企業姿勢や時代の最先端を行っているようなニュアンスが多いです。
私も会社員経験があるので、どの企業にも「経営理念や行動指針」等があることは分かります。
しかしながら、経営理念や行動指針等は頭で理解できていたものの、あまりにも抽象的過ぎて本当に具体的な日々の行動や顧客接点の基準になっていたのかは微妙なところだったと思います。
本当にその意味を理解し、日々の行動に活かし反映させていくことができる言葉かどうか
が重要なのです。
当店のケース
当店の場合、20代前半の女性従業員、しかも社会人経験がない従業員も沢山いるので、難しい言葉を使っても、「飾り言葉になってしまうのではないか」という懸念があります。
日常の会話で出てくるような、小学生5年生でも理解ができる言葉にすること
を、意識しながら各MVVを考えていくこと。更には、
お飾り言葉にならないよう自分事になるようなメッセージ
になるように構成を考える必要があります。
1-3.悩んだら壁打ちをやる
初めてのパーパス策定では、当然、あれこれ悩みも出ますし迷走もします。
この時に重要なのは、頭で考えるだけでなく、誰かに話をして自分の考えをまとめていく、引き出していくという壁打ちです。
当店のケース
当店のケースでは、私と共同経営者と打合せ時にひたすら壁打ちをしていました。
ひたすら壁打ちを繰り返していくことで、相手に伝えようとする意識が働き、今まで言語化できなかった言葉が勝手に出てきます。
特に方針の策定等、語彙力・言語力が必要な場面では壁打ちは、かなり重要で、壁打ちがないと独りよがりな方針になってしまう可能性が高いのです。
まとめ
パーパス策定時に必要なスタンス・考え方について3つのポイントを解説してきました。
つまり、パーパス、MVV等を策定していくステップは、
まず何と言っても、
経営陣がどうなりたいのか?を決めない限り、策定していくことはできない。
そして、
「どうなりたい」という目標を各ステークホルダーが納得・共感できる言葉で端的に伝える技術が必要である。
ということです。
もちろん、パーパス、MVV策定は、各社様々なやり方があると思います。
しかし、この点が非常に重要だと考え、当店はこのようなステップで進めました。
どんな形にせよ、経営者自身が統一したメッセージを出せなければ、前に進みません。
次回は、具体的に何から構築していったのかについて解説していきます。
本サイト「飲食業の明日」コーナーにて、福岡裕記氏による記事の中から、飲食店の経営課題に関連する記事をピックアップしました。
飲食店の経営課題に関連する記事一覧はこちら
飲食店の現状、抱える様々な問題を、経営者視点で鋭く切ります。こちらも是非ご覧ください!
この記事に関するコメント