ワインを楽しんでみたいけど、ちょっと敷居が高い……そう感じている方、とても多いのではないでしょうか。私もワインを学ぶ前の20代前半の頃はそうでした。
でも大丈夫。知識があろうとなかろうと、私の周りのワイン女子のみなさんは、様々な方法でワインを日々エンジョイしているようです。
彼女たちがどんなキッカケでワインを好きになり、今はどんな楽しみ方をしていて、どんな悩みや疑問を持っているのか。インタビューを通じて皆さんのリアルなワインライフを探ってみました。
前回に引き続き、ファッションモデルであり、フランスにも造詣が深い、平山美春さんにお話を伺いました。前編はこちら
聞き手 瀬川あずさ 近藤淳司(編集部)
「最近はしっかり情報収集をしてからワインに向き合いたいなと思っています」
家飲みの極意
編集部 近藤淳司(以下、近藤):平山さんはコロナ禍の緊急事態宣言下では、どのようなワインの楽しみ方をされていましたか?
平山美春さん(以下、平山):私の場合はオンラインでの飲み会とかは、あまりなかったですね。主人とワインを選んで、ゆっくり家で飲む機会が増えたかな。
平山美春(モデル/事業家)さんのプロフィール
フランスに合計5年留学し、結婚を機にモデル業(CanCam 専属モデルを7年経験)を休止。現在は夫の仕事をサポートし、様々な事業に従事。フランス留学中に贅沢な環境でワインが飲めることを自覚し、シャンパーニュやブルゴーニュなども訪問しながら少しずつ勉強。現在はマリアージュや、自分が本当に好きな味を追い求めている。
【平山美春さんのInstagramのアカウントはこちら】
近藤:それはステキですね。瀬川さんはオンライン飲み、しょっちゅうされていたのですか?
瀬川あずさ(以下、瀬川):オンライン飲み会、何度かやってみたのですが……正直少しピンとこないところもありました。それぞれ飲んでいるワインが違うと、香りや味わいを共有できないのが寂しいし、画面越しだとなんだか感情移入しづらい部分もあって。
たとえ同じ銘柄の同じヴィンテージのワインをそれぞれが買っていたとしても、ワインのコンディションには個体差もあるし、味わっている環境や、温度やグラスの微妙な差でワインの味わいって変わってくるし……。
もちろん、人に会えない状況で仲間とコミュニケーションを取りたかったら、致し方ないでしょうけど、同じ場所で一緒に同じワインを楽しむ感覚とは全然違ってくるなと個人的には感じています。
平山:それはあると思う。やっぱり一緒に飲むのとは違うよね。こういう状況になって、対面でワインを楽しめる幸せを改めて実感した気がします。
瀬川:美春ちゃんに聞きたかったのだけど、いま家でも色々なワインを飲んでいると思うけど、グラスやワイングッズとかでお気に入りとかこだわっているものがあったら教えてほしくて。
平山:グラスはフチの部分が薄くいものを使うようにしてる。やっぱり薄いほうがワインとの距離が縮まる気がするし、温度帯やテクスチャーもちゃんと感じることができる気がするから……ブランドにはそこまでこだわってはいないけど。
瀬川:やっぱりグラスは繊細な作りのほうが、ワインのスタイルを直で感じやすいし、エレガントさが際立つよね。
平山:そうなの。繊細なグラスは洗う時にかなり神経使うけれど、今のところまだ割っていないから大丈夫(笑)
瀬川:酔っているときは、特に気を付けないとね。当日は片付けを気にせず思う存分ワインを楽しんで、グラスを洗うのは翌朝にしたほうがいいかも。
近藤:確かにそうですね(笑) 瀬川さんはグラスへのこだわりってありますか?
瀬川:美味しく味わいたいので、装飾性よりも機能性重視ですね。やっぱりリーデル社(※)など専門のグラスメーカーのものはよく研究されて作られているなぁと思います。
品種ごとに様々なグラスの形状が用意されているし、お値段もマシンメイドのカジュアルなものから、ハンドメイドの高級ラインまで幅広く取り揃えられていて……様々なシーンで活用できそうなラインナップなんです。
近藤:20代~30代のワイン初心者の方ですと、グラスにこだわるのはちょっとハードルが高いですか?
瀬川:そんなことないと思います。まずは自分の良く飲むワインに合わせて汎用性の高いものを2脚ぐらい揃えればいいと思いますし、本格的なグラスを買ったほうが、ワインの楽しみがより一層広がります。
一つ言えるのはグラスによってワインの味わいが驚くほど変わること。いいグラスは、ワインの美味しさを倍増させてくれ、結果的にワインの価値を高めてくれるので、少し初期投資してでもちゃんとしたグラスを使ったほうが、ワインライフはより豊かになるはずです。
ちなみに私は、光学効果を取り入れたリーデル社の「パフォーマンスシリーズ」が気に入っています。グラス内側の表面積が拡大されるので香りがしっかり引き出されるし、見た目もキラキラしてキレイだし、耐久性に優れていて割れにくいのも魅力です。
アートを楽しむようにワインを味わう
近藤:平山さんは、既に色々なワインの知識をお持ちだと思いますけど、次のステップに行くために心がけていることなどありますか?
平山:そうですね。何も考えたくない時は、ただただ「美味しい」ワインを飲むだけになってしまいがちなのですが……最近はしっかり情報収集をしてからワインに向き合いたいなと思っています。
アートの場合だと、何も情報がないまま作品に向き合うのが好きな人と、ストーリーを知ったうえで作品を味わいたい人の2通りのタイプがいると思うんです。私は完全に後者なのですが、ワインも同じだと思うんですよね。
ただ味わって感じるだけだと記憶するのにも限界があるし、できるだけ背景となるストーリーを勉強してから味わいたいなと思っています。そうしたほうがワインの印象も変わるし、表現も違ってくると思うので。
瀬川:確かに「ワインは脳で飲む」と言われることもあるくらい、情報を知って飲むのと知らないで飲むのでは、印象が変わってくるかも。特に経験が浅い場合は、何気なく出された赤ワインがなんとなく美味しいなと思っていたとしても、そこまで美味しさに確信がもてない場合も多いよね。
でもそこで急に「これはDRC(※)のグレイトヴィンテージですよ」なんて言われたとたん、その素晴らしさに確信がもてるというか(笑)もちろん、情報が皆無の状態でワインに向き合う楽しさもあるかもしれないけれど、最終的にはしっかりとストーリーを知っておきたいよね。
平山:そういう情報がワインをより一層美味しくさせてくれるっていうのは、すごくよく分かる。
瀬川:ストーリーを知ることは、最適なグラスや温度帯を考慮するのと同じくらい、ワインをいい状態で楽しむためには大切なのかも。
平山:本当に! その時に味わったワインの経験って、たとえ次の日にピンと来ていなかったとしても、今後に活きてくると思うから……知識を補いながら記憶に留めて、ちょっと背伸びして楽しんでいきたいな。
近藤:さすが、フランスに長く住んでいらっしゃっただけあって、ワインとの向き合い方が前向きで大人ですよね(笑)
平山:いや、そんなことないです。実は私、1987年生まれなのですけど、よく不作の年といわれるのでなんとなく落ち込んでいたんです。なんだか人格否定されてるみたいで(笑)
でも、そういった情報を知ったうえで、生まれ年のワインと向き合ってみると、意外に魅力的なワインもあったりして……。ようやく、そういう出会いが嬉しく思えるようになりました。だから単に「オフヴィンテージだ」っていう事実を悲観するのではなく、そこをプラスにとらえたいなと思っています。
瀬川:オフヴィンテージの楽しみ方は色々あるし、そんなに落ち込まなくて大丈夫(笑)逆に生産本数が少ない分、見つけた時や掘り出し物に出会えた時の喜びも大きいし、熟成をそこまで待たなくても美味しく飲めたりするし……。
ワイン以外の醸造酒には、ここまで奥深い「ヴィンテージ」の概念って確立されていないから、ここがワインを楽しむ醍醐味の一つでもあるよね。
平山:確かに。最近は、ソムリエさんに自分のヴィンテージのオススメを聞いてみると、掘り出し物を教えてくれて、新たな発見があったりするし……今は色々と1987年ならではの楽しみ方を見つけるようにしてる。
瀬川:バースデーヴィンテージはもちろんだけど、相手にプレゼントするときにも、ヴィンテージを意識するだけで、贈り物に一気に深みが出るよね。生まれ年のワインを見つけるのが難しかったとしても、出会った記念の年とか、事業を立ち上げた年とか……人それぞれ、思い出のヴィンテージって何かしらあるから。
平山:確かに。ワインを飲んでいるといつも「この年って私こんなことしていたなぁ……」とかヴィンテージが過去を思い出すきっかけになるのよね。記憶を呼び戻してくれるというか。
瀬川:そうそう! 私も「この頃は高校生だったなぁ」とか「ワインの講師をはじめた年だなぁ」としみじみ思うんだよね。ワインに出会う度に、自分の歴史を振り返るきっかけになれるって素敵なことだよね。
自分に合った情報を選択する
近藤:話も尽きないところなのですが、そろそろお開きの時間が近づいてきました。
平山さんに最後にうかがいたいのですが、ワインをこれから楽しみたいと思っている20代、30代の方に向けて、何かアドバイスはありますか? 過去の自分を振り返って、こうしておけば良かった……という失敗談でもかまいません。
平山:そうですね……ただ飲んでいるだけだと、なかなか体系的に覚えられないと思うので、何かテーマを決めてワインに向き合ってみるといいと思います。たとえば「今月はブルゴーニュワイン」とか、「来月はシャルドネ」とか決めて、なるべくそこを攻めていく感じです。
今って情報が沢山ありすぎて、すごく便利なんですけれど、情報過多になって収集がつかなくなるんですよね。だからそのテーマに沿って、ある程度絞った情報集めをしたほうが私の場合はうまくいくと思っています。
瀬川:確かに、雑誌や書籍だけじゃなくて、ウェブサイトや個人のSNSでもワインに関する情報が沢山発信されているから……いざ勉強しようと思ったら、取捨選択が必要になってくるよね。
平山:そうなの。情報がありすぎるのは恵まれているけど、自分に合ったものを見つけて、そこを深堀りしていくのが良いと思う。今はYouTube動画でもワインにまつわる発信がたくさんあって、最近私は動画で勉強するようにしているんだけど……。でも困ったら、ワインスクールのあずさちゃんの講座に通うのが一番かな。
瀬川:ありがとう! 最後をキレイにまとめてくれて(笑)
近藤:興味深いお話をたくさんありがとうございました。現地での経験など、とても楽しく伺いました。
平山:こちらこそ、今までのワインの体験を振り返って整理するよいきっかけになりました。引き続き、自分のペースでワインに向き合って、経験や知識を少しずつ増やしていきたいと思います。あずさちゃんまた一緒にワイン飲みましょう!
瀬川:美春ちゃん、楽しかった。またゆっくりワイントークしましょう!
(完)
後日談
平山 : 実際に国内ですがワイナリーに訪れる機会を作り、富山や新潟に行ってきました!
フランスやイタリアで行ったことがありましたが、日本で更に細かい部分まで質問することもできて、環境や気候のことも分かる環境でどのようにブドウが作られ、ワインが生産されているかなど、旅行のついでに寄ったりするのも楽しみになりました!
ちなみにその土地やワイナリーで一緒に作られている物などを知ることもとても面白かったです。
元CanCam専属モデル、そして現在は事業家としてご活躍! 平山美春さんのInstagramのアカウントはこちら!
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