ワインを楽しんでみたいけど、ちょっと敷居が高い……そう感じている方、とても多いのではないでしょうか。私もワインを学ぶ前の20代前半の頃はそうでした。
でも大丈夫。知識があろうとなかろうと、私の周りのワイン女子のみなさんは、様々な方法でワインを日々エンジョイしているようです。
彼女たちがどんなキッカケでワインを好きになり、今はどんな楽しみ方をしていて、どんな悩みや疑問を持っているのか。インタビューを通じて皆さんのリアルなワインライフを探ってみました。
3人目のゲストは「表情筋トレーナー」として活躍されている山田万希子さんです。
聞き手 瀬川あずさ 近藤淳司(編集部)
「熟成ワインの楽しみ方とかグラスのこととか……もっと学びたいことがたくさんあります!」
「笑顔」の源はワインだった!?
山田万希子さん(以下、山田):山田万希子です。名古屋在住でして、表情筋の講師……いわゆる「笑顔の講師」を17~18年させていただいています。企業の研修やセミナーをしたり、コラムを書いたり、あとは専門学校や短大・大学の非常勤講師もしています。
ここ最近は、新型コロナウィルスの影響でオンラインの授業も多いのですが、「オンラインで対話をする際にどうやって印象を良くするか」といったテーマでお話することが増えてきましたね。
【山田万希子さんのInstagramのアカウントはこちら、公式サイト「Sourire de M」はこちら】
瀬川あずさ(以下、瀬川):万希子さん、よろしくお願いします。そう言われるとオンラインで万希子さんとお話するのはちょっと緊張しますが、お手柔らかにお願いします(笑)。
万希子さんは、数年前に東京でお食事ご一緒してから、いつもSNSで拝見しているのですが、しょっちゅうお酒を楽しまれている印象で。オシャレをして、グラスを持って、レストランでの食事やホームパーティーを楽しんでいる写真を拝見するたびに、色々とお話を伺いたいなと思っていたんです。
山田:ありがとうございます、おっしゃる通りで、私は趣味がまさに「お酒を飲むこと」なんです。美味しいワインを飲むために仕事をしているくらい、大好きで。
瀬川:それはとっても嬉しいです。私もそんな感じですから(笑)
山田:ただ、お酒やワインは大好きなんですけれども、勉強したことが全く無くて。本当に初心者なのですが、今日は色々とお話しながら勉強できたらと思っているので、よろしくお願いします。
瀬川:さっそくですが、万希子さんがワインを飲み始めたきっかけは?
山田:若い頃からワインを飲んでいたというワケではなくて、だいたい10年ぐらい前からでしょうか。ワインってこんなに美味しいんだ! って感じたのは、実はお料理とのペアリングを体験してからでした。
瀬川:そうなんですね。それはレストランで体験したんですか?
山田:はい。名古屋に『カーザデッラマンテ』というイタリアンがあるのですが、当時そちらにいらしたソムリエさんが、とても素敵なペアリングを提案してくださって。ワインを好きになったのは彼女のおかげなんです。今は独立されて『セッタンタ』というお店にいらっしゃいます。よく通っていますけど、すごくオススメですよ。
瀬川:それは行ってみなくては! ワインを楽しめるお気に入りのお店が近所にあって、信頼のおけるソムリエさんがいるのって素敵ですね。そしてペアリングっておっしゃる通り本当に楽しくて、1+1が2ではなくて、3にも4にもなる。その感覚を体験させてくれる方が身近にいるのは有難いことですよね。
山田:そうですね。恵まれた環境に感謝です。
瀬川:なかなか若い時にその感動に出会えることが無い気がするのですが、今の学生さんとかは、レストランに足を運んだり、ワインを飲んだりする機会ってあるんですかね? 実際に大学や専門学校の講師をされていて、感じることはありますか?
山田:正直、みなさん、あまりワインを楽しめるようなレストランには行っていないと思います。仕事柄、若い子たちに触れる機会は結構多くて、色々話しますけれど、お酒……とくにワインを飲むことって少ないのではないかと感じています。お酒好きとしては、困りましたね。
瀬川:特に、昨今のコロナ禍で外出すること自体が減ってしまったし、なかなかそういう機会が持てないのはちょっと寂しいことですよね。
山田:確かにそうですよね。でも楽しみ方って色々あると思っていて。私のお気に入りのバーは、今は時短営業していますけれど、その分早い時間から空いているんです。
別の知り合いのお店も週末は3時からオープンしていて、早い時間はテーブルチャージがかからないし、色々な特典まであるんです。だから若い方もそういうチャンスを前向きに活用したらいいのに……と個人的には思います。
瀬川:そういったワインやレストランの楽しみ方を伝えてくれる人が、周りにいないのかもしれないですね。私たちがもっと頑張らなくては!
編集部 近藤淳司(以下、近藤):期待しています。ところで、ワインを好きになる前はどんなお酒を楽しまれていたのですか?
山田:なんでもです。ビールも日本酒も全部大好きです(笑)! でもワインを合わせるとこんなにお料理が美味しくなるんだってことを知ってからは、ずっとワイン派なんです。
近藤:どんなタイプのワインを良く飲みますか?
山田:赤も白もロゼも、お料理と一緒に色々楽しみますけれど、特に好きなのは「泡」(スパークリングワイン)ですかね。あとレストランでは、あまり食後にデザートを食べないので、チーズに変えてもらって、コーヒーも飲まずに甘口のデザートワインで〆ることが多いです。
瀬川:その楽しみ方、生粋のワイン好きですね(笑)。私も泡が大好きなので、これについては是非あとでしっかりお話させてください。それにしても、ワインに目覚めてここ10年でそんな粋な楽しみ方ができているというのは、素晴らしいですし、聞いていて嬉しいです。
山田:それは本当にソムリエさんのおかげなんです。ワインショップに買いに行ったときも、スタッフさんが親切にアドバイスしてくれるから、そういった楽しみ方ができるようになりました。
私はサンジョヴェーゼ(※)が好きなのですが、そのことをお店の方に伝えると、私好みのワインを上手に選んでくれたりします。自分で勉強できていない分、周りの方に助けられています。
瀬川:それって大切です。知識がそこまでなかったとしても、教えてくれる人が周りにいて、好きな品種や産地を少し掴んでおけば、いろいろと質問しながら会話も楽しめるし、ワインの世界を自分で広げていくことはできると思うんです。
万希子さんの場合は、お気に入りのレストランやショップがあり、好きな品種や好きなワインのタイプが分かっているから、ワインを楽しめる環境がちゃんと確立できていると思います。
山田:そうですか。それは、ありがたいことですね。
瀬川:万希子さんの社交術の賜物かも。「どんなワインが好きなのかわからない」とか「ソムリエさんに何を聞けばいいかも分からない」いう方も沢山いらっしゃいますから。そこを独学でしっかり開拓できているのは、素晴らしいことですね!
山田流ワインの楽しみ方
瀬川:インスタグラムを拝見していると、よくホームパーティーをされていますよね。パーティーの時もワインは自分で揃えられているのですか?
山田:そうですね。それも知り合いのソムリエさんに聞いて、パーティーの趣旨やお料理に合うものをオススメしてもらうことが多いですね。
あと、エチケット(ラベル)のデザインや色を見て、いいなと思ったものを買ってみることもあります。ビオワイン(※)も結構好きなので、参加者によってはそういうワインを選んだりもしています。
瀬川:確かにパーティーの場合はボトルデザインも大切ですよね。いつもパーティーの様子をとてもきれいに写真に撮られていますけど、インスタ映えを意識されてワインを選ぶこともあるんですか?
山田:もちろん味わいが一番重要ですけれど……ボトルデザインが素敵で、いい写真がとれると更に嬉しいですよね。ファッションが大好きなので、逆にワインが決まったら、そのボトルの色調やデザインに合わせて洋服を選ぶことは良くあります。
瀬川:それは素敵!
山田:色や雰囲気を合わせるのが好きで。前に印象的だったのが、カラフルなワンピースを着て『内山三丁目チーズバー』というお店に言ったら、ソムリエさんが「ちょうど万希子さんのお洋服と同じ柄のエチケットのワインがあるので、それ持ってきますね」って言ってくださって。
そういう計らいがすごく嬉しくて楽しかったですね。そんな提案があると、ワインへの興味もよりいっそう湧きますよね。
瀬川:確かに。ワインって色々な楽しみがあって、とっつきにくい難しいものではなくて、そういったファッショナブルな楽しみ方もあるんだよ、ということをもっと多くの人に伝えたいです。万希子さんのような発信が、きっとワインの裾野を広げてくれるんだと思います。
山田:最近、友人が経営している『La Musica』(ラ・ムジカ)というカジュアルなイタリアのプーリア州の郷土料理店によく行くのですが、そこはワインもリーズナブルでオシャレなエチケットデザインのものが多いんです。
行くと殆どのお客さんがワインボトルの写真をとっているんですよ。そう、「映える」から。これからの時代はエチケットからワインに入っていく人も多くなってくるかもしれませんね。
瀬川:たしかに。ジャケ買いすると失敗もあるかもしれませんが、エチケットって造り手のセンスが集約されているものだから、そのデザインに共感が持てたワインだったら、自分の好みと近しい場合が多いんじゃないかと、個人的には思うんですよね。そういう選び方もアリなのではないかと思います。
山田:ですよね! 私も積極的にジャケ買いしてみます。
ワインへの飽くなき好奇心
瀬川:今までお話を聞いていると、万希子さんはワインを楽しむお店もたくさんご存じだし、既にご自身でワインの楽しみ方を確立している気がしますけれど、ワイン関連で困ったこととか、もっと知っておきたいことってありますか?
山田:いやいや、知りたいことばっかりですよ。最近はオレンジワイン(※)も大好きですし、日本のワインも興味があるし。あとは熟成ワインの楽しみ方とかグラスのこととか……もっと学びたいことがたくさんあります!
瀬川:家でもグラスにこだわったりされていますか?
山田:そこまでこだわっていないし、数もあまりないのですが、リーデル(※)さんのグラスをいくつか使い分けています。
瀬川:素晴らしい! 家飲みだったらそれで充分だと思います。
そしてオレンジワインはここ最近、さらに注目されていますよね。造りもナチュラルなものが多いですし、味わいも穏やかなので、ちょっと疲れたときに味わうと、心と体の緊張感が解きほぐされてリラックスした気持ちにさせてくれるんです。産地や造り手によってもスタイルが多種多様ですし、ぜひ色々なオレンジワインを試してみて欲しいです。
山田:はい、ぜひ試してみます! ただ日本ワインは、興味があるものの、味わう機会はまだ少ないですね。
瀬川:日本ワインも、どんどんクオリティーが向上していますし、何と言っても自国のワインですから、しっかり応援していきたいですよね。「ブルゴーニュやボルドーと比べるとまだまだ……」とおっしゃるワイン通の方もいらっしゃるけれど、もともとテロワール(※)が違うので、ブルゴーニュやボルドーの味に無理して近づける必要はないと思うし、飲み手もそこと比べるのはちょっと違うかなと。
日本の歴史や気候風土や造り手の気質を反映させた独自の味わいを、「日本ワインにしかない唯一無二の個性」として楽しんでいただきたいです。とはいえ、今や海外のプロフェッショナルをあっと言わせる大物も出てきているので、これからがますます楽しみです。
山田:いいですね。お話を聞いていると日本ワインのことももっと学んでみたくなりました。
(後編につづく)
「表情筋トレーナー」としてご活躍! 山田万希子さんのInstagramのアカウントはこちら、公式サイト「Sourire de M」はこちら】
今回のゲストトークで話題になった「取り合わせ」(マリアージュ)と「エチケット」については、別連載の中でもテーマとして取り上げています。ぜひご覧ください。
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