ウイスキージャーナリスト住吉祐一郎氏による韓国初モルトウイスキー蒸留所「スリーソサエティーズ」のレポートを、実際の取材映像と住吉氏の取材記でお届けします。(編集部)
住吉祐一郎の蒸留所訪問 韓国スリーソサエティーズ編(4)
国際的なウイスキージャーナリスト住吉祐一郎氏による
韓国初となるウイスキー蒸留所『スリーソサエティーズ』のレポートシリーズ(4)です。
この動画では、マーケティング スペシャリストであるユービン・キムさんにインタビューしながら
- ミリング(注1)の工程
- 仕込み槽について
を紹介していきます。
住吉祐一郎氏の取材記も併せてご覧ください。
住吉祐一郎の取材記(4)
ウイスキー蒸留所では、独自の仕込みを行っていますが、ここスリーソサエティーズも例外ではありません。
ウイスキーを造る前段階として、麦芽から麦汁を造るのですが、その際に麦芽を粉砕するミリングと呼ばれる工程があります。ウイスキー用の麦芽はスコットランド産を使用する蒸留所が多く、これはスコットランドには巨大な精麦所があって、自国で栽培して精麦するよりもコストを低く抑えることができるためです。
麦芽はハスク(殻)、グリッツ(粗びき)、フラワー(粉)の3段階に挽き分けます。この3種類(グリスト)をお湯と混ぜることによって、麦汁が造られます。ウイスキー造りでは、一般的に綺麗に澄んだ糖度の高い麦汁を引き出すことが求められます。そのため、グリストには蒸留所ごとに独自の比率が存在します。最も一般的なのは、2:7:1の割合でしょう。
スリーソサエティーズでは、クリスプ社の麦芽を1トンのフレコンバッグで使用しています。フレコンバッグとは、flexible container bag(フレキシブル・コンテナ・バッグ)の略称で、四角や円柱型の袋の上に丈夫な吊りベルトが付けられた、使用後に折りたたむことができる大きな袋のことです。このフレコンバッグ2つ分(2トン)をスリーソサエティーズでは1回の仕込みに使用しています。
挽き分けられた麦芽は、糖化槽というステンレス製の槽に入れられ、お湯を足し、ドロドロとしたおかゆ状のものを作ります。これを麦汁と呼びます。槽の下には細かな網目状のフィルターが付いていて、出来上がった麦汁をゆっくりと濾し、綺麗な麦汁を取り出します。蒸留所によっては濾したあとにさらにお湯を足して、2番麦汁、3番麦汁を取るところもあります。
出来上がった麦汁はアルコールを精製するために、ステンレス製の発酵槽へと移されます。発酵槽に移された麦汁に酵母を加えると、酵母が活性化して麦汁中の糖分を食べ始めます。このときにブクブクとした泡(二酸化炭素)が出て、アルコールが発生します。これがウイスキーの基になる低アルコール(約6~9%)のウォッシュ(もろみ)と呼ばれるものです。
このウォッシュを一回目の蒸留を行う初留釜へと移し、蒸留が始まります。
かなり端折って説明しましたが、実際には、麦汁の抽出や使用する酵母、発酵時間など、蒸留前にもかなりの工程が存在します。
また、この工程を少し変えるだけで、出来上がるスピリッツが変化するため、蒸留所では常に最適・最善の仕込みが模索されています。スリーソサエティーズも例外ではなく、さまざまな試みが行われていました。
韓国ウイスキー蒸留所 スリーソサエティーズ編(5)では、糖化槽、樽詰庫での試飲、を紹介していきます。
住吉祐一郎さんのインタビューも是非ご覧ください。
住吉祐一郎氏の書籍紹介
ウイスキーに、誘われて
〜英語で旅するバーテンダー(ニュージーランド・カードローナ蒸留所編)〜
住吉 祐一郎/著 近藤淳司/編集
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