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最終話 フラグを残して

skype参加だった凄腕エンジニア前田が会議に顔を出すことに。
皆が驚くその正体とは?(■物語概要・登場人物の紹介はこちら ■第1話から読みたい方はこちら)


「……えっと、何か用事ですか?」と僕は聞いた。
「ここは、関係者以外は立ち入り禁止なんですけど……」

「……来ました……」と無表情でその女の子は言った。
両手で、足下まである漆黒の長いスカートを少したくし上げていた。
その手が小刻みに震えている。

「来た? 誰が?」

「……前田が」

「前田? どこに?」僕は辺りを見回した。前田、どこだー?

「……ここに」

僕はこの子が何を言っているのか分からなかった。

「すみません、誰かの親族の方ですか?」

「……いえ、前田です……近藤チームの前田です……ボクが前田です」

「えっと、意味が分からないけど?」

「なので、いつものゼーレの向こうにいたのが」と前田と自称する女の子は、おどおどして言った。
「プログラマーの前田、つまりボクなんです……ふふふ」

「えっ」と僕と本宮の声が出た。その鼻にかかる笑い方は確かに前田のものだ。

「私は何度か前田さんに会ってるけど……背の高い男の人だったのに」
と本宮が言った。

「……すみません、あれ、ボクの兄なんです……ボクの名前は前田未来(みくる)と言います……」

「ええええええ!?」

話を聞くと、とびきり引きこもりで人見知りの前田は恥ずかしさのあまり、人と接しないと出来ない事務作業は兄に全部やってもらっていたとのことだった。
前田未来(女子)は顔を真っ赤にしていた。
これはもしかして、フラグ……?

「近藤さんと初めて会ったのは2年前のコミケ会場で、暑さで座り込んでいたボクを救護室まで連れて行ってくれたんです……そんなことをしてもらったのは生まれて初めてだったので……もじもじ」

「……あの女の子が前田だったとは……いやはや」
僕はなんと言ったらいいか分からなかった。

フラグ? これはフラグなの? おじいちゃん、フラグが、フラグが立った!?

「それで、なんでまた男を演じていたの……」と本宮が尋ねた。

「近藤さんがどんな人か知りたくて……異性としてより同性の方が、素が出やすいって言いませんか?口調とかも男性に整えて、頑張ってみました。
近藤さん、思った通りの人でした……思いやりがあって優しくて面白くて……それで、『付き合うから話がしたい』って言ってくれて……
ボク、恥ずかしかったんですけど力強く『出て来い』と言われたので、出て来ちゃいました……もじもじ」

「近藤さん、本当なんですか!?」と本宮が僕に迫った。

「誰も付き合うなんて言ってない!『顔を付き合わせて話し合いたい』って言ったんだ!
だいたい男だと思っていたのに、そんなこと言うわけないじゃない!」

「どうだか」と呆れて本宮が言った。

「本当は前田さんがこんなに可愛い子って知ってたんでしょ?そうじゃなきゃ、そもそも極度の引きこもりの人に出て来いなんて言いませんよね……嘘ばっかり。
大体、今日の分のキットカット、どうなっているんですか、まだもらってませんよ!?」

「……ボク、付き合うから出て来い、って言われて正直に出て来たのに……もう恥ずかしくてお嫁に行けない……」
と前田未来(女子)はぽろぽろと涙を流し始めた。
僕は慌てて彼女にハンカチを渡した。

「近藤さん!」と本宮。
「近藤さん、優しい……」と前田。

「あわわわわ、中野さん!!このシチュエーションをどうしたらいいんです!?」
僕は中野さんに助けを求めた。

「恋の相談ですか? 実はメルマガで恋愛相談もやっていましてね、そちらをご覧になったら良いと思います」

「意味不明!! 何を言っているんですか!?」

ともかく、こういう感じで会議は無事に(?)終了し、僕らはチーム一丸となって開発に向かうのだった。

でもその話は、また別の機会に。

おわり

長編に渡りお読みいただきありがとうございました。(編集部)

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