最後の企画会議。プロジェクトを進める上で改めて再認識されたメンバー同士の本音のコミュニケーション。そして何よりもコンサルタントの存在は大きい。(■物語概要・登場人物の紹介はこちら ■第1話から読みたい方はこちら)
「次に、僕らが困っていても、当事者以外の視点で中野さんが度々問題を整理してくださったのはありがたいことでした。
内輪だと、どうしても利害関係がありますし、そこにいろんな人間関係も重なって、問題がごちゃごちゃのまま先に進まない、ということは多かったですね。
問題が整理されているから一つずつ事にあたれた、というか。
グループ・オンのSaaS化の際に、バラバラのアイデアをシームレスに繋ぐことが出来たのは、一つひとつの知識に中野さんが精通されていらっしゃったことが大きいかと。
それにプロジェクト管理機能を切り離して、無料でユーザー企業のクライアントに配布する、というアイデアも、中野さんがノウハウをご存じだったから出せたアイデアだと思うんです」
「いやはや」中野さんは驚いた様子で、そして口元を緩めながら言った。
「そうですか、そこまで言っていただければ幸甚です。それが正にコンサルタントの仕事ですからね。近藤チームはもう大丈夫です、開発もきっと上手く行きますよ!」
僕は中野さんにそう言われて、少し誇らしげだった。
自分もチームリーダーとして何を言うべきか、何をすべきか、そういうことの片鱗が見えてきたことに嬉しさを覚えた。
また開発者としても、ユーザーはもちろん、営業部、そして役員というバラバラの視点をつなぎ合わせて、客観的に物事を見る視点が生まれてきたことに対しても自信が少しついた。
もちろん、それは始まったばかりだ。
いつも上手く行くとは限らないだろうけど、多分大丈夫。
その時、僕のスマホにメッセージが入った。
前田が会社の近くまで来ている、という内容だった。
「前田さん、出社するんですか?」と中野さんが少し驚いた様子で尋ねた。
「楽しみですね、どんな方か、お目にかかりたいと思っていました」
「前田さん、お会いするのは数ヶ月振りですね」
と本宮が少し呆れたように言った。
「背が高くて青白くてひょろひょろしてる、としか印象がないですけど」
「昨日、ヤツを少し叱ったんです。企画会議も最後なのに、顔も見せないでどういうつもりだ、って。
僕もヤツに対してイライラしていて……それまでは仕事さえ出来れば問題ないと思っていたんです。でもいつもPCの向こうにいて、何を考えて話しているか分からなかったから、『しっかりと顔を付き合わせて話し合いたい』と。
企画が出来上がって、握手をしていないのはお前だけだよ、って。
渋っていましたけど、出て来いや! と叱り飛ばしました」
「叱るというのは難しいことですよね」と中野さんは言った。
「そこに信頼関係がなければ全て崩れてしまいますから」
そうそう、と僕が頷いていると会議室のドアがノックされた。
はい、どうぞと本宮が声をかけたが返事がない。
僕は前田だな、と思ってやれやれ、と仕方なくドアを開けた。
そこには全身黒ずくめのゴシックロリータ服を着た可愛らしい20歳くらいの小柄な女の子が立っていた。


この記事に関するコメント