MENU

第23話 プロジェクトキックオフ(後編)

新規事業開発物語 〜中小企業のためのコンサルタント活用術

それぞれ個性が強い役員達。さらに一癖も二癖もあるプロジェクトメンバー。
不安に満ちたプロジェクトキックオフミーティングはまだまだ続くのであった。(物語概要・登場人物の紹介はこちら)


「ありがとうございました。ではメンバーの紹介です。アシスタントの本宮さん」

本宮は眉間にしわを寄せ、肩まで伸ばした明るい髪を両手で後ろにやり、そしてつっけんどんに立ち上がった。

「どうも本宮リエです。えっと、私はこのプロジェクトの話をこの前急に聞かされたんで、良く分かっていないところがあります。よろしくお願いします」

本宮は一礼してさっさと座った。

良く分かってないって、あれほど説明したじゃん!!先が思いやられるよ、まったく……。
あと、人前で露骨に嫌そうな態度を取るなとあれだけ注意しているのに、まったく。

「ええ……では、エンジニアの前田君。今日はネット中継となります。前田君、よろしく」

前田からは何の返事もない。

「前田君、前田君? また寝てるの? 前田君?」

「寝てないっすよ」と眠そうな声が返ってきた。
やっぱり寝てただろ、お前。

役員トリオから失笑が漏れた。中野さんは苦笑している。

「前田です。今回担当のエンジニアです。どうぞよろしくお願いします」

前田もエンジニアの契約当初は顔を出していたけど、(いつもマスクをしていたので顔を良く覚えていない)最近は滅多に会わなくなった。
仕事のレベルは高いので良しとしている。
世知辛い世の中、引きこもりたくなる気持ちは痛いほど良く分かる。
でもリーダーになったら、そういうわけにはいかんのだよ前田。
でもちょっと羨ましい。

「では最後にプロジェクトリーダーを任されました、不肖近藤です。九州は福岡の出身で、高専を出ました。とんこつラーメンより普通のしょうゆ、味噌の方が好きなんですが、そう言うと博多の地を踏むな、と罵られるので東京に出てきました。よろしくお願いします」

はは、という笑い声が辺りから漏れ、まばらな拍手が起こった。
はあ、疲れた。

このようにしてキックオフミーティングは終わった。
ご覧のように、一波乱も二波乱も起こりそうな雰囲気である。
そして実際にそうなるだろう。
すべての物語が、退屈であっては成立しないように。
あたかもそれが初めから用意されていた、決まり事のように。

小野正博のワンポイントアドバイス⑨

プロジェクト運営には外部の有力なパートナーと協力することはもちろん、
社内のコンセンサス、協力が得られることが何よりも重要です。

コアシステム社内は実に分かりやすくそれぞれの胸中、思惑がばらばらで、まだまだ「一枚岩」となってプロジェクトの成功へ向けて頑張ろう!などといった雰囲気ではありません。
このままでは近藤リーダーの胃に穴が空く日も近いかもしれませんが、そこを何とかするのがコンサルタントである中野の腕の見せ所でしょう。

コンサルタントの活用法として、技術・経験・ノウハウだけを期待するのではなく、プロジェクト運営に必要な社内のコミュニケーションに関する相談も是非頼ってみてください。
例えば社内会議に第三者が入ることで、発言がより明確になったり、上長もルーズさや傲慢さがなくなったりします。
役職者は、そのほとんどが体面を気にしますから(笑)。

また、意見調整・取りまとめにも第三者であるコンサルタントの公正さは役に立ちます。
ここでは前述の技術・経験・ノウハウも更にコンサルタントの提言内容の後押し材料になるわけです。

インストラクターであり、ファシリテーターでもある。
ここぞという場面では強力なリーダーシップを発揮する。
そんなスキルを持ちながら、TPOに応じた顔の使い分けを徹底する。
誰が何を求めていて、自分は何をどこまでやるべきか判断する。
本物のコンサルタントとは、こういう人物像だと僕は考えています。

どんなプロジェクト運営でもコミュニケーションこそが最重要。
その先にクライアントとのより良い関係も築いていけるのですから。

「あなたは社内の誰かを、どこかの部署をお客さん扱いしていませんか?」

第24話「鮨はいいね」に続く

新規事業開発物語 〜中小企業のためのコンサルタント活用術

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

この投稿がよかったらシェアお願いします!
  • URLをコピーしました!

この記事に関するコメント

コメントする