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第12話 でも、やっぱりお高いんでしょう? いいえ、適価です

でも、やっぱりお高いんでしょう? いいえ、適価です

コンサルティングサービスを航海士に例えて説明し始めた中野。一方の近藤は費用が気になって仕方ないのだが……。
(物語概要・登場人物の紹介はこちら)


なに言っちゃってんのこの人は、と近藤は心の中で軽く突っ込んだ。
早く話の続きを! と前のめりになって中野の言葉を待った。

「船長は航海士と一緒の船に乗ることで、大きなメリットがあります。
まず海図には書かれていない情報を得ることができる。
次に、自分がいる位置を客観的に把握できる。
そして何よりも、そのことによって、船長が航海の経験を積み、理解を深めることができる、ということです。
つまり、情報、プロジェクト全体における立ち位置の把握、そして経験と理解。これらが得られるわけです」

「なるほど……では、やはり、お高くなるのでしょうか……」
と意気消沈して近藤は嘆息した。

「逆です」

「えっ?」

「安くなります」

「なんで?」と素の声を出して近藤は聞いた。

「外部に丸ごと発注するのとは違います。全体の外部委託では全てを委ねる。つまり、船長も航海士も船員もすべて雇うようなものです。
私は、私が航海士だけの仕事をするので、その分だけの報酬でけっこうです、ということを言いたいのです」

「はあ」

「最終的な企画の立案は、私と一緒に考え、やっていきましょう。適切なアドバイスを差し上げられると思います。そして最後の実行は近藤さんにやっていただく。そうすれば報酬の心配はかなり抑えられると思います」

なるほど、と近藤は感心した。そういう発想はなかった。
確かに一緒に考える手伝いをしてもらうだけなら、費用は抑えられるだろう。
アイデアをもらうことばかりに気が回っていた。
しかも相手はプロだ。的確で有用なアドバイスが得られるに違いない。
そうか、コンサルタントに依頼するとは、そういうものだったのか。

「しかし……実際の所はおいくらなのでしょうか?」

ノミの心臓のような小心者のくせに、いざ流れに乗ってしまえばそれまで躊躇していたような大胆なことが言えるのが近藤である。
しかし、中野は大して気にしなかった。よくあることだからだ。

「1ヶ月で企画をまとめるとしましょう。私は週に2回ほど参ります。今までの案件でもそのくらいの頻度がちょうど良かったですね。1回につき2時間ほど、一緒に考えましょう。それと持ち帰りでのバックヤードの作業時間を少々ですね……」

「はい……」

近藤は暗算した。1回の相談で10万円、かける2で20万円、バックヤード分も入れるから、かける4じゃなくて5として……

「100万円で結構です」

「計算通りかよ!」と近藤は思わず大声で自分に突っ込んだ。

「……近藤さん、大丈夫ですか?」

「申し訳ございません、大丈夫です」

「ご納得いただけますか?」

いただけるもなにも、当初見積もっていた予算より遙かに安い金額で、むしろ近藤は驚いているくらいである。

「全く問題ございません、その方向性なら代表の説得もできると思います!」

近藤の目は子供のように輝き始めた。希望が見えたのだ!

そんな近藤の様子を見ながら、中野は航海の例えは良かったな、よし、今度からしばらくこれで行こう、と自画自賛していた。

小野正博のワンポイントアドバイス No.4

物語の中の中野と近藤のやり取りはとてもリアルです。
まずは担当者としての近藤の心理描写がよく分かります。
自分が思いついたとはいえ、初めてコンサルティングサービスの依頼を検討しているわけですから、最低限自分が納得できる内容でないと社長を説得することは適いません。
既に(術中にはまり)中野に傾倒しつつありますが、費用の面の悩みを解消して、やっと前に進めるというところでしょう。

サービスの本質とその価値を理解することから費用の検討をすること。
実に当たり前のことなのですが、皆さんは徹底できていますか。
例えば「今なら30%オフ!」などの文句に釣られて買ったのは良いけど、あまり使えなかった、もう少しお金を出せば満足のいく商品が買えたのに。と、そんな経験はどこから来るのでしょう。
安いか、高いか、そうではなく、ただ適価なのかどうかなのです。

この物語のような中小企業では、ほとんどの購買の際の基準が、オーナー(決裁者)の思い込みによる「高い・安い」の判断だけに委ねられてしまっていることが少なくありません。
特に目に見えないと表現されるコンサルティングサービスなどについては、その本質・価値を見極める力がリーダーには求められるのです。

第13話 「倒れるときは前のめり」に続く

でも、やっぱりお高いんでしょう? いいえ、適価です

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