ウイスキージャーナリスト住吉祐一郎氏による韓国初モルトウイスキー蒸留所「スリーソサエティーズ」のレポートを、実際の取材映像と住吉氏の取材記でお届けします。(編集部)
住吉祐一郎の蒸留所訪問 韓国スリーソサエティーズ編(3)
国際的なウイスキージャーナリスト住吉祐一郎氏による
韓国初となるウイスキー蒸留所『スリーソサエティーズ』のレポートシリーズ(3)です。
この動画では、スリーソサエティーズのスピリチュアルアドバイザーであるアンドリュー・シャンドさんにインタビューしながら、
- スピリッツのチェック
- ウォッシュ(注1)について
- 長年の経験からくる勘について
- ミドルカット(注2)と試飲
- 韓国初のシングルモルトウイスキーKI・ONE(キウォン)について
そして、最後に「アンドリューさんのウイスキー造りに対する想い」を紹介していきます。
住吉祐一郎氏の取材記も併せてご覧ください。
住吉祐一郎の取材記(3)
スリーソサエティーズでは、蒸留器から流れ出るアルコールを、70度を超える度数で取り出します。スコットランドで取り出す度数(63.5~66度)よりも高いわけですが、その理由は、フルーティなフレーバーを抽出でき、香りが長持ちするからだそうです。夏場と冬場など時期によっても変えているそうですが、残念なことに韓国の消防法では、樽詰めの際にアルコールを60度以下にしなければならないため、水を加えて落とすそうです。
シャンド氏はそのことが熟成に与える影響はないと言っていましたが、ウイスキーの味わいに直接影響するため、僕としてはとても気になるところでした。今後リリースされるウイスキーに反映されるでしょうから、気長に待ちたいと思います。
蒸留方法に関して、シャンド氏は自動化の流れを懸念していました。自動化の利点はウイスキーの質に一貫性を持たせることですが、その反面、個性に乏しいウイスキーとなってしまいます。かつてのスコットランドでは、蒸留担当者が状況に応じてスピリッツの取り分けを行っていたそうです。その違いが、出来上がるウイスキーの個性になっていたのでしょう。その変化があったからこそ、美味しいウイスキーが出来ていたのだと思います。
スピリッツの個性の幅が狭くなるということは、選択の幅も狭くなるということです。スピリッツの良し悪しの見極めをどのように行うかという質問に対して、シャンド氏は「長年の勘」だと言っています。もの造りにおいては、「もうほんの気持ち」といった数値化できない部分が重要になります。すべてが計算通りに行くわけではないので、感覚が大切になってくるわけですね。シャンド氏の勘は、長年のブレンディングによって養われてきました。日々の研鑽によって、人々が好きだと思う味の感覚を推測できるようになったそうです。
ウイスキー造りで最も重要なことは何かとの問いには、難しい質問だとしながらも、「すべての人を喜ばせることはできないと気付くこと」との返答でした。シャンド氏は万人受けするものよりも、個性のあるウイスキーを造りたいそうです。韓国初のモルトウイスキー蒸留所として、韓国らしいウイスキーを造りたいと答えてくれました。
スピリッツの取り分けも、機械に頼るだけでなく、常に試飲しながら官能によって取り出していました。僕も試飲させてもらいましたが、とてもフルーティでモルティなスピリッツとなっていました。このスピリッツを14か月間熟成させたウイスキー(韓国では1年間の熟成でウイスキーと呼ぶことができます)が、2020年に開催されたサンフランシスコ・ワールドスピリッツコンペティション(SFWSC)のシングルモルト部門において、金賞を受賞しました。シャンド氏のウイスキー造りが、早くも国際的な品評会で認められたわけです。
‘Never stop learning’ (学ぶことをやめないこと)、そして ’Keep exploring’ (探求し続けること)の言葉は、これからもスリーソサエティーズ蒸留所でのウイスキー造りに色濃く反映されていくに違いありません。そのウイスキーを楽しみに待ちたいと思います
韓国ウイスキー蒸留所 スリーソサエティーズ編(4)では、ミリングの行程、仕込み槽について紹介していきます。
住吉祐一郎さんのインタビューも是非ご覧ください。
住吉祐一郎氏の書籍紹介
ウイスキーに、誘われて
〜英語で旅するバーテンダー(ニュージーランド・カードローナ蒸留所編)〜
住吉 祐一郎/著 近藤淳司/編集
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