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第37話 企画案を協議する

企画フェーズでメンバーから出された異なるアイデア。
コンサルタント中野はそれらをどう取りまとめ、一本化していくのだろうか。(物語概要・登場人物の紹介はこちら)


「少し時間が押してますね。急いで問題点を整理しましょうか」と中野さんは珍しく少しだけ疲れた声で言った。

「まずは本宮さんのアイディアですが、やはりクライアントとの間で使えるプロジェクト管理ツールだけに絞ってしまうと、ちょっとターゲットが狭くて、ユーザーに訴求しづらいかと。もう少し他の機能も欲しいところですよね」

本宮は右斜めに座る中野さんを見て、真面目な顔でこくりと頷いた。
アイコンタクトを取って中野さんも頷いた。

「前田さんの着眼点は非常によろしいのではないでしょうか。
スマホファースト、この考えは今後主流になりますよ。でも、今回はやはりコストと期間を考えると、うーん、ちょっとどうかな、と思いますね」

PCの向こうにいるはずの前田は何も言わない。
どんな顔をして中野さんの話を聞いているのか、PCのモニターに映った黒いゼーレのモノリスからはなんの判断もつかない。
僕は少しだけイライラしてきた。
前田に対して、今までこんなイライラすることはなかったのに。

「近藤さんの案は、なんというか……」
中野さんは言葉を選ぶようにして言った。
「アイディアと言うよりは、近藤さんの課題を整理したのかな、って感じですよね」

僕は痛いところを突かれて、同意せざるを得なかった。

「そうなんです……」と僕は苦笑いを浮かべて言った。

「既存のクライアントで、グループ企業2社で一緒に利用してもらうために、組織マスタの最上階層である『会社』を仮想の『グループ会社』として読み替えて対応していたんです。
その下の『部門』をそれぞれの『会社』に、『部』を『部門』というように置くわけですね。
そうすれば仮想的にグループ関連会社のようにデータベースを設定できますから。(下記参照)

■組織マスタ(例)

  1. 会社(株式会社○○○○)→1. グループ会社(○○○○グループ)
  2. 部門(開発部門)    →2. 会社(株式会社○○○○)
  3. 部(第一開発部)    →3. 部門(開発部門)
  4. 課(○○○○課)    →4. 部(第一開発部)
  5. チーム(○○チーム)  →5. 課(○○○○課)
    (こうすることで仮想的にグループ会社のように処理できる)

ただ社員マスタもグループ間で上手く利用できるようにすれば、かなり柔軟なグループ社員間のやり取りができそうだと何となく思ってはいたのですが……」

「でも、グループ・オンのマスタ構成を単に修正したとしても、売り上げ上位の競合アプリに機能面で並ぶくらいで、目新しいところは特にないんですよね」

「そうですよね……」

「コスト感から言えば本宮さんか近藤さんの案です。前田さんの案は少し厳しいですね。
でも問題は、それだとどちらもこれから新規に参入するものとしてはインパクトに欠ける、ということです」

中野さんは両腕を組んで、MacBook Proの画面を睨むように目を落とした。

アイディアシートを見るともなしに見ているのだろう。

「次回には決めないといけません。良い手段は、今の整理の内容を踏まえて改めて各自整理し、検討材料を増やすということですね。なので各アイディアシートに、各自コメントを寄せてください」

散会。

結局決まらなかったし、良いアイディアもこれ以上出そうにない。

開発予算も期間も限られているとなると、どうしようも出来ないんだな。

結局、クライアントサーバ版グループ・オンをSaaSに移行するだけなのか……。

僕は肩を落とした。落胆という字をイメージで表すと今の僕なんだろうな、っていう感じですよ。

第38話 「プロジェクトを通じて見えてきたもの」に続く

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