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第9話 コンサルティングってお高いんでしょう?(前編)

社長の説得と同時に気になるのがコンサルティングの費用。近藤の考えは?
(物語概要・登場人物の紹介はこちら)


近藤が言いよどんでいるのには、もちろん理由があった。
それは報酬・費用という、常に我々に付きまとう繊細な問題である。

コンサルタントと共に開発をする。
その費用の相場というものが全く不明瞭だ。
ネットで探しても載っていない。肝心なことはネットではわからない。
仕方なく、近藤は大体の当たりを付けた。
しかし、それが先方の要求する金額とあまりにもかけ離れていたら、
どうすれば良いか。
高すぎてはこちらが損だし、低すぎては失笑される。
それで口にするのが憚れているのである。

近藤はこう考えていた。
自分の人件費を1時間当たりの社内コストに換算すると約5,000円、
毎日半日程度をこの企画検討に充てたとして、1日で2万円。
1週間=5日で10万円だから、月に40~50万円程度は必要ということになる。
そして何も生み出さない可能性も。

一方、コンサルタントに依頼した際、1時間数万円だったとしても、何も生み出さない、と言うことはないだろう。
なにせプロだし、またそれがプロの仕事だ。少なくとも、何か策は得られる。

それは電車と飛行機の旅に似ている。
時間はかかるが、車窓から眺める景色まで楽しめるのは、電車の旅だ。
一方の飛行機は、あっという間に目的地に到着する。
味気ないが、時間が短縮できた分だけ、目的地での時間をより多く費やすことが出来る。
今回は、道中を楽しんでいる場合ではない。
そもそも楽しめるかどうかすら怪しいし、予算も時間も限られているのだ。

お金は時間を買うためのものだ、というどこかで読んだ本の一節を、近藤はひしひしと実感した。

少なくとも、専門家に依頼するという発想は、素人が右も左もわからずに頭の中を無駄にこねくり回すよりは、遙かに建設的だ。
しかし、いくらそれがベターなアイデアであるとはいえ、プロジェクトの予算は潤沢に用意されているわけではない。
自分と同程度のコストがもう一人分(月50万円)積めるかどうかというのが、せいぜいじゃないだろうか。
それでも社長の山岡にどのように伝えれば良いものか、皆目わからない。

「その……お恥ずかしい話、こういう案件は初めてでして、良くわからないのですが……」

中野がよし、今晩は寿司で行こう、と決めたとき、近藤が重い口を開いた。

「はい。何がわからないのですか?」

中野に促されて、近藤は話をなんとか続けた。
こういうセンシティブな話題は、本当に苦手なのだ。

「……報酬のことです。恥ずかしながら、弊社も開発資金に糸目を付けない、というわけには当然参りません。
相場としては、いったいどのくらいなのでしょうか……
正直なところ、金額によっては代表の許可が下りるかどうかわかりません」

ほら来た、と言わんばかりに中野の目はぎらり、と輝いた。
近藤は身震いし、その鋭い眼光から思わず目を逸らした。

第9話 「コンサルティングってお高いんでしょう?(後編)」に続く

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