興味はあるけど、BARに行ったことがない方に、BAR「HONESTY」のマスター田頭大輔氏が、BARの様々な話やお酒のお話をお届けします。
孤高のウイスキー
ヴェスパー、というカクテルがあります。
今日はそのお話がメインではないのですが、少々お付き合いください。
勤めていた当時、今よりももう少し時間に余裕があった頃。
すっかり映画にハマっていて、お客さまから旧い映画を教えてもらっては、毎週のようにレンタルショップに行って物色していました。
そのきっかけになったのが、ヴェスパーマティーニ、というカクテル。
BAR好き、カクテル好きの方にはお馴染みとなったかと思いますが、この通称「ヴェスパー」は2006年、007の新シリーズ1作目に登場したカクテルです。
当時、ジェームズ・ボンドに感化された男性方からヴェスパーをオーダーされることが増え、流行にまでなりましたが、立ち消えることなく今も根強い人気を誇るカクテルです。
ちなみにですが、ゼロゼロセブンと言うと怒られました。
違う、ダブルオーセブンだ、とのことです。
ファンの方の前ではご注意を。
そのヴェスパーを自分が知ったのは、流行った少し後のことでした。
オーダーを受けることはありましたが、レシピは分かってもその背景が分からない。
それでは本当の意味で作ることはできないのではと、物語を知る必要を感じ、たまにしか使わなかった会員カードを引っ張り出して、レンタルショップへと向かった次第です。
子供の頃、週末のテレビ番組でスパイ映画が流れているのを父が観ていました。
その時は、スパイなんてなんだか地味だなぁ、くらいに思っていたような気がします。
それが少しは大人になったのか、昔は地味だと思っていたシーンの、口数の少ない心理戦のような描写にすっかり魅力を感じていました。
そこでいよいよ登場するのが、ヴェスパーマティーニなのでした。
それからです。
時間に余裕があった、ということもあり、旧作漁りが始まりました。
お客さまからも教えていただき、特にお酒が象徴的に登場する作品を中心に。
色々観ていくと、なるほどあのカクテルはここから来ていたか、ということもありました。
名作が五万とある中、大体観た、なんて口が裂けても言えませんが、最近になって旧作に興味を持った方へご紹介するのに、今も少し役立っています。
そのくらいには観ました。
そうして多少、映画好きのお客さまとも好きなシーンを語れるくらいになった頃、007の新作の情報が聞こえてきたのでした。
しかも、「スカイ島」で撮影されたとも。
今夜の一杯 タリスカー 10年
前置きが長くなりましたが、今日の本題です。
スカイ島と言えば、ウイスキーをお好きな方ならみなさん聞いたことがあると思います。
スコットランドの古い言葉で、霧の島、翼のある島、などの意味があるそうです。
その島で唯一のウイスキー蒸留所だったのが、タリスカー。
唯一の、というところからか「孤高のウイスキー」なんて呼ばれ方もしています。
が、惜しくも現在はスカイ島にも新たに蒸留所が作られたため、唯一の、ではなくなってしまいましたが。
それでも、間違いなく今も強力なファンの多い蒸留所です。
なんで翼のある島なんだろう、と調べてみたことがあり、その時一つ記事を見つけました。
その記事は今では消えてしまっていたようですが、記憶を元に要約すると。
「タリスカーはもちろん、スコットランドの地名はゲール語という現地の古い言語に由来します。
昔の人が海をわたりながらスカイ島を見た時に、飛び立とうと翼を広げている鳥のようだと思い名付けたのでは」との考察が写真と共に綴られていました。
なるほどその通りであろうと、力強い羽ばたきを思わせる写真でした。
思い返せば、店主も初めて自宅用に買ったスコッチ・シングルモルトはタリスカーでした。
ウイスキーを勉強し始めた頃、イベントで散々飲み比べて、いくつかに絞った中で決めた一本であったと記憶しています。
孤高、のあたりもちょっと効いていたかも。
ちょうど、借りてきた映画を観ながら飲んでいたものです。
そんなボトルも、居合わせた誰かにずいぶん飲まれてしまいましたけどね。
さて、007の新作ということでしたので映画館へ行きました。
タリスカーを知っていると、物語の内容と相まってより緊張感を楽しめた気がします。
その日の自分はきっとどこかで、タリスカーと、ヴェスパーを飲んだことでしょう。
そんな風に映画を楽しめていたのは、この頃だからこそかも知れません。
少々こじつけ臭かったかも知れませんが、ウイスキーはカリラ、クラガンモアと書いたので、次はタリスカーと決めていたのです。
お好きな方だと、次のテーマがどこの蒸留所かお気づきになるかも知れません。
続きをお待ちいただければと思います。
いつもお付き合いくださってありがとうございます。
本日は少しお待たせしてしまってすみませんでしたね。
懲りずにまた休憩しにいらしてください。
Information
記事で紹介したお酒 ■タリスカー 10年(Amazon)
記事で紹介した映画 ■007 カジノ・ロワイアル(Amazon)
BAR HONESTY 店舗情報
■住所:〒120-0033
東京都足立区千住寿町2-17 松岡ビル4F
http://www.bar-honesty.com/
■電話番号:03-6806-1737
※お電話は営業時間内にお願いします。
■営業時間:17:00~翌2:00
定休日 水曜日
■12席 ※1グループ4名様まで 貸切応相談
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