このシリーズの記事ではバーテンダーの私が、BAR初心者やウイスキーを初めて飲む人でも分かりやすいように、またお酒が飲めない小学生でも楽しめるような内容で説明しています。
そのため、厳密に言えば定義等が違うこともありますので、ご了承ください。
「こんなものなんだ!」と全体像を掴んでいただければ幸いです。
前回の記事では、酵母菌に適した環境について解説しました。
甘い汁である麦汁を酵母菌が活性化しやすい温度まで下げてから酵母菌を投下することで、アルコール度数が6〜9度前後の発酵液が出来上がる
ということでしたね。
「酵母菌によって、アルコール度数が6〜9度前後の発酵液が出来上がる」ということを覚えていただければOKです。
出来上がった発酵液は、ビールと同じくらいのアルコール度数です。
今回解説していく「蒸留」の工程で、アルコールの純度を高めていきます。
沸点の違いを利用して、アルコールを分離・濃縮していく
蒸留とは、
混合物を加熱して蒸気として蒸発させ、それを冷却して再び濃縮させることで沸点の異なる成分を分離・濃縮する操作
のことを言います。
何となく言ってることはわかるけど、イメージがあまり湧かないという人も多いでしょう。
誰もが経験したことがある分かりやすい例でいうと、小学校の理科の授業で、枝付きフラスコに水とアルコールを入れて、枝付きフラスコに入ったアルコールと水の混合物をアルコールランプで温めて、アルコールだけを抽出したことがあると思います。
水の沸点は、100度。
アルコールの沸点が約80度のため、先にアルコール成分が気化する性質を利用してアルコール成分だけを抽出するということです。
これと同じことをもっと大規模かつ精細にやっているのが、ウイスキーの蒸留という工程です。
ちなみに、この枝付きフラスコに該当する装置を蒸留器と言います。
蒸留器のサイズはビルのように大きなものから、人型サイズのコンパクトなものまであります。
蒸留を繰り返し、アルコールの純度を高めていく
一度蒸留しただけでは、アルコールの純度はまだ粗い状態です。
より良いアルコール成分だけを抽出するために、複数回蒸留します。
一度の蒸留で、約3倍前後アルコールが高くなると言われています。
具体的には、
- 発酵液のアルコール度数:6度〜9度
- 蒸留1回目:約20度
- 蒸留2回目:約65度〜約70度
というようにアルコール度数が上がっていきます。
蒸留された液体は無色透明で、この液体のことを「ニューポット」と言います。
この液体を熟成させることで、ウイスキーの原酒になっていきます。
高純度のアルコールであれば良いのか?というと、そういうわけではありません。
蒸留回数が増えるとより高純度のアルコールを作ることができますが、同時に発酵液が持っていた風味や味わいが飛んでしまうということもあります。
純度が高ければ良いというわけではないのです。
また、抽出されるアルコールも蒸留し始めと終わりでは味わいが違います。
一般的には、
- アルコールが抽出され始めたタイミング…アルコール度数が高く、軽い酒質
- アルコールが抽出できなくなる直前のタイミング…アルコール度数が低く、重たい酒質
と言われています。
アルコールが抽出されたタイミングによって味わいが異なってくるので、造りたいウイスキーに適した部分だけを抽出していきます。
アルコールの純度を高めつつ、どれくらい香りを残すのか、どんな味わいにしたいのか。
ここに各社のこだわりが詰まっているのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
一見、難しく感じてしまう蒸留という工程ですが、意外と身近にある技術だということがお分かりいただけたと思います。
蒸留器にも複数種類があり、形状によっても大きく味わいが違ってきます。
そして、このニューポットウイスキーを木の樽へ詰めることで、皆さんがよく見かける琥珀色のウイスキーへ変化していきます。
次回は、熟成の工程について解説いたします。
ニューポットウイスキーで感動した話
少し踏み込んだ話になりますが、蒸留工程で発酵液を温める方法は蒸気で温めたり、石炭を焚いて温める等、様々な方法があります。
「加熱方法で何が変わるのよ」と思われると思いますが、ウイスキーの味わいに影響を与えます。
以前、静岡県にある静岡蒸溜所のセミナーで、木の薪を燃焼させて加熱して出来たニューポット(薪直火加熱)と蒸気で加熱したニューポットを飲み比べしましたが、全く味が違いました。
個人的な主観ですが、薪直火加熱で出来たウイスキーは砂糖を入れたようにウイスキーが甘く、液もとろみがあるように感じました。
ウイスキーは熟成の方法次第で味が全く異なってきますので、実際のところニューポットの時に美味しかったからと言って、熟成を経て瓶詰めされたウイスキーが美味しいかどうかはわかりません。
ですが、「このウイスキーが熟成されたら、きっと美味しいだろう」とポテンシャルを推し量ることはできます。
バーテンダーがウイスキーのイベントでニューポットウイスキーを飲み比べする時は、
ニューポットウイスキーをお客様に提供出来るかどうか
を見定めるのではなく、
このウイスキーは、ポテンシャルがあるのかどうか
を見定めるために試飲しています。
ニューポットウイスキーは市場に出回ることが少ないので、飲み比べできる機会が少ないですが、ウイスキーのイベントであれば、飲み比べすることができます。
イベントでは、一部有料試飲となっているニューポットウイスキーもありますが、多くのニューポットウイスキーが無料で飲むことができるようになっています。
福岡県でもジャパニーズウイスキーにフォーカスを当てたイベントが開催予定ですので、ご興味がある方は是非足を運んでみてください。
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