【英語への情熱 第3回】「グローカル人材」には自国の文化理解を

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語学

2021/02/12

【英語への情熱 第3回】「グローカル人材」には自国の文化理解を

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「明確な意識化」そして「グローカル人材」を目指そう

すでに連載の第1回、第2回でもお話してきましたが、皆さんの中で、もし「外国(英語圏)で生まれたか」や「海外留学」していなければ、英語がマトモに話せないと思われているようでしたら、そのムダな固定観念は今すぐなくしてしまいましょう! 通訳をしていますと、同席させて頂く日本人の方で「やはり、海外暮らしが長かったのですか?」と聞かれることが有ります。「海外暮らし」、ステキな響きですし、短い期間ながら私も二十代で海外赴任させて頂く機会も有りましたが、まさか私が高校1年の時に英語ストレスでやけ食い? していたとは想像されず、「やはり」という言葉の中に、どこか外国で優雅に苦労なく? 英語を流暢に話していたと勘違いされることが多いのを感じます。

私のモットーは「人が見ていない時にどれだけの努力をしているか、その差がいずれはその人の実力差となって表れる」です。まさに生まれつきの足の速さにかまけて昼寝するウサギと、進み続けることが取り柄のようなカメのごとく、語学習得というのはコツコツタイプさんにピッタリなのかもしれません。ただ、皆さんがどちらのタイプであろうと、目指すところ、目標を決めたら、あとはあれこれ考えずに前進 (march forward)あるのみです。では、24時間365日英語に囲まれているのではなく、日本語オンリーの超ドメスティックな言語環境で「スピークアウト」(声に出す)するには、「何を」「どうすれば」良いのでしょうか?

その前に、私たち日本人の圧倒的多数が日本の普通の学校に行って初めて学ぶ英語、その教育の在り方について少し述べてみたいと思います。従来の英語教育には大変残念ながら否定的な意見がかなり多く、私なりに思うところをここでまとめてみます。

例えば、授業で大きなウェイトを占める「英文解釈」では、英語から日本語へと正確に後ろから訳して(多くの外国語同様、英語と日本語は文構造が真逆)置き換えていくことが求められます。高校、大学受験ではその解釈の決まりごとである「英文法」と必要なボキャブラリーを数千語程度丸覚えしなくてはなりません。私の場合、国語や本が元々大好きだったことが有り、関係代名詞や仮定法といった文法概念の理解も、言葉というものに対する純粋な興味から段々と楽しいものにすることができましたが、多くの学習者が「よくわからない」「おもしろくない」と感じて、「英語が苦手」「英語は嫌い」となってしまう気持ちも、既にお話しました通りとても良く分かります。英語アレルギーを克服しないままに「学校を卒業すれば、英語に関係ない仕事に就こう」「自分に(または会社、部署に)英語は不要」などと高をくくっていたら、時代はグローバル化がもはや当たり前となり、使える「英語」の需要が日々高まっているのは、皆さんもひしひしと感じているでしょうし、本連載を読まれているのもその理由が大きいかと思います。

では、学校で習った(はずだった)知識は十分で、英語の成績はまあまあ良かったとしましょう。会社に就職して数年経ち、さあ今日はオフィスに国際電話がかかって来る予定です。同僚につい頼まれて軽く引き受けたものの、電話口の向こうから、いきなり”Hello?”と言われて、頭が真っ白! または外国人観光客に道を尋ねられて、”Sorry, I don’t know”と返すのが精一杯、というのでは学校時代にせっかく費やした時間、エネルギー、お金を考えるとご両親にも自分にもモッタイないですよね。

確かに、学校英語とネイティブが使う英語には、同じ言語といえ大きなギャップが有るのも事実です。私たちが普段意識せずに行っている日本語での日常会話を考えてみても、新聞の社説のような「お堅い内容を述べている」わけではなく、自分の今の気持ちや考えを素直に伝えることができる「ツール」として、物心ついた時から当たり前のように「いつも」使っているわけです。この状況は、英語を母国語とするネイティブスピーカーにしても全く同じことです。ただ私たちは、英語のクラスで日本語を介して英語を学んでおり、しかも四六時中英語を使っているわけではないわけです(プロ通訳者の仕事でも、日本語使用が半分は必要です)。そのため「明確に意識」して、これからインプットを行っているのだと自分の脳に言い聞かせて、コミュニケーションとしての英語に触れる(be exposed to communicative English) 時間を出来るだけ増やすことが大事です。

日本のこれからの英語教育について

ここで日本のこれからの英語教育について少しお話させてください。

昨今では、小学校からの英語授業が当たり前となり、子供たちの英語に対する抵抗感をなくし、興味を育てるという観点から、ついに「コミュニケーション」重視の英語が日本の学校でも可能になり、英語教育の弊害がようやくこれで全て消えるという楽観的見方もあるでしょう。

一方で私の中には、英語を重んじる余り、私たちの母国語である日本語の習得がおろそかになるようでは本末転倒になってしまうという思いもあります。将来、日本がさらに大きく門戸を開けて、留学、ビジネスや観光だけでなく、長期滞在者や永住移民の数も大幅に増えていくと予想されます。日本の第二公用語が英語になる時代もいつかは到来することでしょう。

だからといって、雨を表すにも400語を超える言葉が有ると言われる私たちの美しい日本語をそっちのけにして、「英語」ができれば日本語はもう不要! で良いのでしょうか? この四季折々の季節感あふれる母国の文化、民族性、そして先祖たちが残してくれた様々な有形・無形の遺産を文字として受け継ぐことのできる日本語を誇りに思い大事にしながら、グローバル化がもたらす多様性(diversity)も受け身でなく、自ら積極的に受け入れていくことが今の時代をイキイキと生きていくことなのだと確信しています。

言い換えますと、グローバルな視点だけでなく、ローカルな視点も併せ持つ「グローカル」人材として好奇心一杯に様々な形で日本と世界に対して関わり、自分なりの貢献をしていくことが、世代やバックグラウンドを超えて、私たち日本人に一番に求められているのではないでしょうか?

(次回は2021年2月19日(金)の予定です)

印田 知実

印田 知実

いんでん ともみ

上智大学文学部英文科卒業。外資系銀行、エアラインの役員秘書を経て、中近東(バーレーン)勤務。湾岸戦争直前に帰国翌日に元防衛庁統合幕僚会議議長の私設通訳兼秘書となる。一方で平成3年に有限会社メドフェインターナショナル設立。各国語の通訳、翻訳を中心に、語学人材を派遣する委託業務も行なう。自ら通訳(マーケティング、医学/製薬、製造、官公庁、アカデミック等、分野を問わず)、翻訳にて、国内外を飛び回る傍ら、...

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