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【ワインのたしなみ 特別編その6(後編)】ゲスト:伊藤ナツキさん「ワインでも絵でも、自分が内面で感じたことや思い描いていたことを表現できたときに、喜びを感じるよね!」

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酒と料理

2022/08/04

【ワインのたしなみ 特別編その6(後編)】ゲスト:伊藤ナツキさん「ワインでも絵でも、自分が内面で感じたことや思い描いていたことを表現できたときに、喜びを感じるよね!」

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「おいしい!」から始める、毎日をちょっとだけ楽しくするワインのたしなみ~ワインに恋して、Happyになる~

ワインを楽しんでみたいけど、ちょっと敷居が高い……そう感じている方、とても多いのではないでしょうか。私もワインを学ぶ前の20代前半の頃はそうでした。でも大丈夫。知識があろうとなかろうと、私の周りのワイン女子のみなさんは、様々な方法でワインを日々エンジョイしているようです。彼女たちがどんなキッカケでワインを好きになり、今はどんな楽しみ方をしていて、どんな悩みや疑問を持っているのか。インタビューを通じて皆さんのリアルなワインライフを探ってみました。

前回に引き続き、プライベートでも親交が深いイラストレーターの伊藤ナツキさんにお話を伺いました。

ホストテイスティングの目的とは?

伊藤ナツキさん(以下、伊藤):ホストテイスティング(※)ってちょっと緊張してしまうかも。ソムリエさんがワインをテイスティングしているなら、お任せしてしまいたくなっちゃう。

※ホストテイスティング:ワインのヴィンテージ、ワイン名、生産者などがオーダーしたものと違っていないか、またそのボトルのワインに異状がないかを確認するためにホストに依頼されるテイスティングのこと。

伊藤ナツキ(イラストレーター)
1983年京都府出身。2006年よりフリーのイラストレーターに。 ファッション系の広告や雑誌のイラストをはじめ、企業とのコラボレーショングッズを多数手がける。近年はライブペイント、壁画など、幅広いジャンルで創作活動を行っている。

瀬川あずさ(以下、瀬川):私も昔そうだったから、その気持ちすごくよく分かる! もちろんソムリエさんもご自身でワインをテイスティングされるけれど、やはりお客様の最終的な確認も必要になってくるので、ゲストを代表してホストがテイスティングして、ワインが欠陥でないかどうかをダブルチェックするの。

編集部 近藤淳司(以下、近藤):そうなんですね!

瀬川:はい。ホストテイスティングを求められると、「大丈夫です」と断ってしまう方もいるんですけれど、ゲストをおもてなししているときにホストがそれをやってしまうのは、少し失礼にあたる気がします。

ゲストに出して問題ないワインかどうかをしっかり確認することは、「相手に最高においしいワインを楽しんでもらいたい」という気持ちの表れでもあるので。今度からテイスティングをすすめられたら是非積極的にやってみて欲しいですね。

伊藤:なるほど。ホストテイスティングはおもてなしの心の表れでもあるんだね。

瀬川:そう、特にカッコイイコメントを言う必要はないので、ホストテイスティングは積極的に実践して欲しいな。

伊藤:そういったマナーも本当に奥が深いよね。

近藤:乾杯の時ワインのグラスをぶつけないとか、女性はボトルを持たないとか、色々言われますが、日本でそれを実践しているのはごく一部ですよね。

瀬川:日本では、ワインにまつわるルールを知ったうえで、シーンに応じて臨機応変にふるまうのが良いのかもしれないですよね。女性がお酌をする文化の中で何もしないと、気が利かない人に思われてしまうこともあるし……。

乾杯に関しては、「ぶつけた勢いでチップしないように気を付ければ、グラスを合わせても問題ない」と言われることもあります。ともかく相手やモノを敬って丁寧に接する気持ちが大切なのかもしれませんね。

伊藤:なるほど、勉強になる!

作画:伊藤ナツキ

ワインを楽しむ「居場所」を見つける

瀬川:ナツキちゃんは色々なお店に詳しいけれど、ワインを飲むのにオススメの場所ってあるかな?

伊藤:六本木の『MARU’S Bar』(マルスバー)が大好き。温かいご夫妻が経営されていて、お料理も美味しくて。グラタンとかオムライスとか蟹クリームコロッケとか色々なメニューがあるし、チーズの種類も豊富なんだよね。一軒目でも二軒目でも楽しめるし、お店の雰囲気も落ち着いていて、いつも時間の経つのを忘れてしまうの。

瀬川:マルスバー、私も好き! 随分前に、ふとしたご縁でご夫妻がワイン会に来てくれたことがあって、ビックリした。私の小さなワイン会にも足を運んでくれるなんて、ちょっと驚いたけれど本当に嬉しかったな。

伊藤:それは素敵!あれだけワインに精通されていても、そういう会に参加されるって素晴らしいね。あとはお友達ご夫妻がやっているベトナム料理店の『Ăn Đi』(アンディー)とか。国内外で活躍されているソムリエの大越さんが選ぶワインが興味深くて。

瀬川:うんうん。ペアリングが魅力的だし、勉強になるよね。

伊藤:本当に!ナチュール系のワインもすごく美味しいのをセレクトしてくれるから、自然派が飲みたいときはハズせないお店かも。あとは女子会で使えるのは『la cave de Noä』(ラ・カーヴ・ド・ノア)かな。

瀬川:ノアもいいね。気軽にも楽しめる一方プレミアムワインも置いているし、色々なシーンで楽しめると思う。

伊藤:私がよく利用するのはその三軒が多いかな。せっかくワインを美味しく飲むなら、居心地よいところで飲みたいよね。

瀬川:やっぱりアーティストとしては雰囲気も気になるものなのかな?

伊藤:確かにそれはあるかも。お店が醸し出す空気感って、美味しくワインを飲むために重要な要素だと思うんだよね。そういうお店はやっぱりリピートしたくなるよね。

作画:伊藤ナツキ

ワインと絵画の共通点とは?

瀬川:ところで、ずっとナツキちゃんに聞いてみたいと思っていたのだけど、ワインを表現するときの感覚って、絵を描く時の感覚と似ている部分ってあるのかな?

伊藤:それはすごくあるかも! なんだろう、「想像力で遊べる」っていうのかな? 自分の感覚の中でピッタリくるところを模索していく感じがすごく似ていて楽しい。例えばワインの香りを表現するときに、ピッタリな言葉を色々な角度から考えて当てはめていくのだけれど、その感覚が自分の表現したいものを絵で描いていく時とすごく似ている気がする。

瀬川:色を作ったり、線で表現したりしていくことが、ワインの表現における言葉を紡ぐ作業と通ずるところがあるってことだよね?

伊藤:そう! 「付き合いはじめたばかりの初々しいピンク色の空気の感じ」とか「日曜日の午後に行き交う人々の雰囲気」とか……思い描いた情景を普段は絵で表現するのだけど、ワインの香りをとった時に、そういう情景が浮かんできたりもするの。それを違った手法で表現していくのが面白くて。

近藤:ポエティック(詩的)ですね!

瀬川:やっぱりアートや音楽に造詣が深い人ってワインが好きな人が多いし、ワインとの向き合い方もアーティスティックなんだよね。音とか色とか響きとかに敏感だし、捉え方が奥深くて美しい。

伊藤:うん、そうなのかもね。きっと「表現する楽しさ」が一緒なのかも!

瀬川:そう! そして色々なワインの個性を愛せる人は、音楽やアートも幅広く楽しむことができる人なのかもしれないね。

伊藤:そう思う。そしてワインでも絵でも、自分が内面で感じたことや思い描いていたことを表現できたときに、喜びを感じるよね!

瀬川:確かに。私は絵を描いているときはまだ模索でしかなくて、なかなか「これ!」とピンとくる時が少ないのだけれど……もっと修業して、感覚と表現がぴったり合った時の喜びを体感したいと思っている。

伊藤:その喜びを感じられるようになってきたら、成長の証なのかもね。私もワインと向き合った時に、自分の中で感じたことを、しっくりくる言葉で表現できた時はすごく嬉しかったな。そしてもっと嬉しいのは、その表現に対して誰かが共感してくれたとき。その喜びや楽しみはクセになるかも。

瀬川:そこがワインやアートにハマる要因でもあるのかもね。

近藤:僕は以前パリに4年間ほど留学していて、文学と絵画の研究をしていたんですね。その観点からいまのお話を考察していたのですが……きっと伊藤さんは絵画的であると同時に、極めて文学的にもワインをとらえているんだと思います。

まず、ワインを飲んだ時の香りや味わいというのが、情景として思い浮かぶんだろうなと。その情景に対して、本職のイラストレーターとして絵筆だけではなく、文学的、つまり詩的に、言葉で当てはめていくのだと思うんですよね。そして、それが絵画と詩の「共感覚」を生んでいくことで絵画と詩が絡まり合い、更にアートのモチベーションが高まっていく……。

そういうワインの楽しみ方を見ていると「ワインはひとつの芸術的行為をおこなうことができるコミュニケーション手段」なんだと、改めて思います。

瀬川:私もその芸術的な感覚ってとても重要だと思っていて。

ワインをどう感じるかということって、人それぞれで個人差があるし、そこに不正解はないと思うんです。それはアートも同じことで、作品がどう描かれていようがそれはそれで自由ですよね。

ただ、そこから多くの人の「共感」を呼ぶということが、アーティストとして活動したり、プロのソムリエとして表現したりするにあたって必要になってくるのではないでしょうか?

そのためには対象をしっかり分析して表現することもプロとしては必要で、イマジネーションだけで完結してはいけないと思います。

伊藤:その「芸術的な部分」と「理論的に分析する部分」とのバランスって大切なのかもしれないよね。プロとして求められるときは分析するスイッチが入るけれど、楽しむのだったらそういうのはナシで自由に表現したいし。

瀬川:確かにそうだよね。

伊藤:私が先生で絵を初めて習う人に教えるとしたら、「まずは自由に描いてみて。間違えはないから感じたことを表現していいんだよ」って絵の楽しさを体感してもらうところから入ると思うの。でも、もしその人がプロを目指したいとなったら、構図とか色彩理論とかをしっかり勉強する必要があるよね。

瀬川:ワインにおいてもそう。やっぱりワインを自由に楽しみたい人と、プロを目指したい人とでは、ワインに向き合うアプローチの仕方は違ってくるよね。ただ感覚で楽しむだけなのか、それが人の共感を呼ぶのかどうか、そこに分析や理論がはいってくるのか……そういった部分が、ワインラヴァーとプロフェッショナルの違いになってくるのかもね。

これからワインを楽しむ方に向けて……

近藤:では、最後にうかがいます。ワインをこれから楽しみたいと思っている20代、30代の方に向けて、何かアドバイスはありますか? これはおそらく過去の自分に向けてのメッセージでもあると思うのですが。もっとこうしたら良かった……という失敗談でもかまいません。

伊藤:ワインは知識を自分で深めているっていうより、周りの人から教わったことがとても大きくて。なので一人で学ぶというよりも色々な人とのかかわりを大切にして、そこからワインの感性を磨いていくのがいいのかなと思います。

近藤:今日のインタビューをうかがって、伊藤さんは本当にワインに対してナチュラルに素直に向き合っていらっしゃるようにお見受けしました。そこがワインを心から楽しむ秘訣なのかもしれませんね。

瀬川:本当に! 私も本当に沢山の人にワインの様々な魅力を教えてもらって、いまの自分がある気がしています。ワインのご縁に感謝しながら、ライフワークとしてのワインに自分らしく向き合っていきたいですね。そして今日もたくさんの学びと発見がありました。ナツキちゃんありがとう!

(完)

後日談

今は妊娠中でお酒が飲めないけど、また飲めるようになるのが楽しみ! 子供が産まれてもたまにゆっくりワイン(と料理のマリアージュ)を堪能できる時間は作りたいです。子供の生まれ年ワインもきっと揃えることになりそう(笑)


イラストレーターとしてご活躍! 伊藤ナツキさんのInstagramのアカウントはこちら、公式サイトはこちら

(今回で連載は終了です。ご愛読ありがとうございました!)

瀬川 あずさ

瀬川 あずさ

せがわ あずさ

仙台市出身。聖心女子大学卒業後、施工会社の秘書を務め、多くの飲食店のリーシングや施工業務に携わる。その後、趣味が高じてワインや日本酒、食に関する様々な資格を取得。その資格を活かし、記者・ライター業、飲食コンサルティング業などに従事する。2014年、食に特化したリレーションサービスを提供する株式会社食レコの代表取締役に就任。また2020年には、人材紹介や翻訳サービスを行うレピュニット・ラボ合同会社を...

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