ウイスキーに、誘われて

ウイスキーに、誘われて

〜英語で旅するバーテンダー(ニュージーランド・カードローナ蒸留所編)〜

住吉 祐一郎/著
近藤 淳司/編集

本書のあらすじ

多くのウイスキー好きが集う名店、福岡のバー・ライカード。プロの英語通訳としても肩書きを持つ、そのオーナーバーテンダー住吉祐一郎はウイスキーに誘われて世界中を旅します。向かった先はニュージーランド・カードローナ蒸留所。福岡からオーストラリア、そしてニュージーランドへ、いくつものトラブルに巻き込まれながらユーモアに溢れる文体で皆さまを大いに笑わせてくれるでしょう。ウイスキーに対する深い造詣と愛情。ウイスキーの製造法をはじめ、水、ピート、麦、蒸留について詳しく解説してくれます。

編集者からのオススメ

住吉さんは、一見物静かな方である。また実際に静かに落ち着いて話す方なので、ウイスキーへの熱い想いとのギャップがありながらも、実に真面目な方であるような印象を受ける。ところが旅行記の中の住吉さんは、度重なるトラブルに巻き込まれ、ブラックユーモアを交えながら面白おかしく旅情を展開してゆく。オーナーバーテンダーの顔しか知らないバーの客や同業者の方々は、もしかするとまったく別の一面をこの本の中に見つけて驚くかもしれない。

そのような住吉さんと一緒に旅をする僕らは、住吉さんに寄り添い、共感することが出来るから、いつの間にかすうっとウイスキーについて語る住吉さんの言葉に耳を傾けているのである。この人の言うことなら信じられる。そう思わせてくれるのである。

まるでバーでカウンターに座る僕らに、優しく語りかけてくるような口調の文章を読み進めると、いつの間にか僕らはウイスキーについて詳しくなっている。水やピート、麦や蒸留について、おおよそのことは頭に入っている。ユーモアたっぷりの旅行記はその後も続き、読み終えたあとにもう一度彼と旅行をしたくて最初から読み直す。そうすると、ウイスキーのことがもっと分かるようになる。

飲食店では常識だが、普通バーの客は店に付かず、人に付くという。だからこの本があれば珍しい世界中のウイスキーを取りそろえているバー・ライカードに足を運ばなくてもいい。僕らは住吉さんが楽しげに旅行とウイスキーについて語るのを本の中で目撃する。そして実際に福岡のお店に赴き、彼とウイスキーについて語り合うのもいい。美味い酒と楽しい話が待っている。

内容の一部をご紹介

【第1部より】
海外の空港では、搭乗カウンターが変更になったり、便が遅れたりすることがよくあるため、僕は乗り継ぎには3時間以上の余裕を持たせるのだけど、今回は幸運にも4時間の余裕を持たせていたのでした。その間に食事を取り、ゆっくりしようと考えていたのに、スーツケース紛失のために食事どころではありません。広い空港内をくまなく走り回ることになってしまいました。あちらに走り、こちらに走り、疲れ果てて……また別のカウンターに戻り……どうしようかなと思っていると、オーストラリアの航空会社「カンタス航空」のおじさんが、こう言葉をかけてくれました。

No worries, mate. We’ll find your suitcase. When I went to Japan, people around me were so kind. It’s our turn.

(大丈夫、スーツケースは見つけるから。日本に行ったとき、周りの人たちはほんとに親切にしてくれた。今度は僕らの番だ)

この言葉を聞いて、僕はとても嬉しくなりました。おじさんの親切さはもちろんだけど、彼が日本に行ったときに、親切にしてくれていた日本人がいたこと、その結果として、今シドニーの空港で困っている僕に対してサポートをしてくれていること。紛失したスーツケースを探すことは、航空会社の職員としては当然のことだとしても、こんな言葉をかけられると、心細い気持ちが吹き飛んでしまいます。

【第2部より】
ではここで、ウイスキーの原料について説明したいと思います。皆さんは、ウイスキーを造るための原料には何が必要かご存知ですか? ウイスキーを造るために必要なもの、それは「大麦と水と酵母」です。たったこれだけ? そう、たった3つだけなのです。大麦と水と酵母。でもたったこれだけの原料ですが、その工程はたったこれだけ、では済まないくらいにとても長く複雑です。ひとつひとつを細かく取り上げると、それこそ学術論文のようにどこまでも果てしなく続いて行くので、ここでは割愛しますが、上記3つに加えて、どうしても外すことができない大切なものが、もうひとつあります。

それは「気持ち」です。ウイスキーを造る人の熱意のことです。まさに「スピリット」なのですが、ウイスキー造りは、造り手の熱意なくしては成り立ちません。ごく大雑把に言うと、「大麦を蒸溜してアルコールに変えた後、樽で熟成させてできるものがウイスキー」です。文字にすればこれで終わりですが、実際の生産には、非常に手間のかかる作業と工程があります。ウイスキーに限らずどの分野も同じで、どこまで突き詰めていっても終わりはありません。その終わりなき道を、常に切り拓いて行こうとしているのが、その道の職人たちです。

【第3部より】

Is this your car? (これ君の車?)

It is. Anything wrong? (そうです。何かありました?)

Well, it’s out of rego. (えっとね、車検が切れてるよ)

と言うではないですか!!

Whaat!? Are you kidding? That’s insane! This is a rent a car!(うっそ~!! 冗談でしょ? そんなわけないやん! これレンタカーやもん!)

と言いましたが、こっちに来てこれ見てみろと言われて見た、フロントガラスの隅に張り付けてある車検証の日付は、なんと2か月も前に有効期限が切れていたのでした。

You should’ve checked it. (確認しとかなきゃ)

と言われましたが、レンタカーの車検が切れてないかなんて、普通チェックしないだろ!

That’s not my job! (それは僕の仕事じゃない!)

これまでにも海外のさまざまな国に行って、多くの車を運転してきましたが、車検切れの車を貸し出されたのは初めてのことでした。怒りというよりも、笑いが込み上げてきました。そんなどうしようもない気持ちになっている僕の横で、制服のおじさんとおばさんは、手元の機械を事務的に操作して、「はいこれ」と白い紙切れを僕に手渡しました。説明の必要もないと思いますが、それは違反切符でした。罰金200ドル。

目次

  • はじめに
  • 第1部 ウイスキーに誘われて福岡からニュージーランドへと旅立つ
  • 第2部 カードローナ蒸留所とウイスキーあれこれ
  • 第3部 ニュージーランドからオーストラリア、そして福岡へ
  • おわりに

書籍情報

ウイスキーに、誘われて
〜英語で旅するバーテンダー(ニュージーランド・カードローナ蒸留所編)〜
https://www.amazon.co.jp/dp/B089T8D57D
著者:住吉 祐一郎
編集:近藤 淳司

住吉 祐一郎プロフィール

福岡県生まれ。バー・ライカード オーナーバーテンダー。ウイスキージャーナリスト。オーストラリア国立マッコーリー大学政治学部卒。プロの英語通訳としても活躍。2015年より竹鶴シニアアンバサダー。共訳書に『ウイスキー・ライジング』(小学館、2018年)がある。

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