カメラ片手にブラ俳句 第3回「俳句のヒントになる本」

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芸術

2021/01/07

カメラ片手にブラ俳句 第3回「俳句のヒントになる本」

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渋谷をくまなく歩いているうちに、あることに気が付いた。
それは、「カメラにおさめたい」風景と、「俳句にしてみたい」風景が、ぴったり重なる ということだ。
ただし、カメラの場合は撮ってしまえばそれが答えだが、俳句はその後の推敲が待っている。これが楽しくもあり、頭を使う作業でもある。
私が「俳句をしている」と人に言うと、必ず聞かれるのが「俳句って難しくないの?」「何が面白いの?」という質問だ。

私も最初の頃は何が面白いのか分からなかった。
そこで諸先輩方に直接、質問をぶつけてみた。
日本伝統俳句協会 原宿支部の句会が終わった後、会員の皆さんとお茶をしていた時のこと。「俳句の面白さとは?」私が訪ねると、皆さんから口をそろえて言われたのは「俳句に答えなんてない」という言葉だった。
そして、「見たものをどれだけそのまま12音にするか」が大事ということ。

先輩方の回答を素直に受け取ってみることにした。
つまり「俳句には答えがない」が答え。
しかし、これでは腑に落ちない。
それならば、古来から先人たちが詠んできた句や、現代俳人の方々の句を、自分でまねしてみることにした。図書館で本を借りてきて、ひたすら、人の俳句を書く。実際に書いて、手に頭に、「俳句のいろは」を落とし込んでいった。

特に初心者として参考になったのが、五味太郎氏の絵本「俳句はいかが」
「菜の花や月は東に日は西に」という、国語の教科書にも載っていそうな有名な句をはじめ、ぱっと見ただけで「風景が浮かぶ」句がたくさん載っていた。
なぜ、風景が浮かぶのか?それはきっと、私が都会っ子じゃなく、新潟のちいさな田舎で育ったからこそ、イメージを共感できるのだと感じた。
この本を読むと、俳句は難しくない、と思える。今、新たにひねり出す必要はない。田舎育ちの私が見てきた四季の風景を、大人になった私がどう表すか? それだけだ。

絵本の中で、五味氏は「俳句はしゃべるボール」と表現している。野球のように決められたルールの中で、人から人へ伝わっていく言葉のボール。投げ方も、キャッチの仕方も、形は人それぞれ。俳句も同じく、自分が感じた感想と、人が感じた感想が違って当たり前、その感覚のズレも楽しむ世界なのだ。

”俳句は難しい”と詠まず嫌いの人に、ぜひ読んでほしい入門書だ。

「俳句はいかが」

もう一つ。俳句に興味を持ちたいけれど、どう一歩目を踏みだしたらいいか分からないという方は、自分の趣味と俳句を掛け合わせた本を探してはどうだろうか?例えば「旅と俳句」「スポーツと俳句」「釣りと俳句」。あるいは自分の出身地の地名を題材にした俳句集など。

私の場合は花が好きなので、季節の花を題材にした俳句本を探すことにした。
この時、図書館で見つけたのが「花旅吟―花と俳句を楽しむ (ウイークエンドナビ)

四季折々の代表的な花68種と、その花にまつわる句が紹介されている。
これをまねして書いてみただけでも、頭の中にインプットされ、花を使った句のヒントになった。この本を見つけたのは2019年6月で、まもなく菖蒲が咲く頃だったので、夏の吟行の際、非常に役立った。

こうして独学を繰り返した結果、ある仮説にたどりついた。それは、奇をてらわず「だから、何?」と思えるくらいがちょうどいい俳句ということ。
最近はバラエティ番組でも、芸能人の詠んだ句が取り上げられることが多いが、私の自論では「俳句は面白い芸人には作れない」。なぜなら、ウケを狙おうとするからだ。そうではなく、いかに「そのまま」書くか。極端に言えば、俳句を知らない一般人から見て「これのどこが面白いの?」と、思われそうな句。その感覚が、俳句経験者にとって「これだよ、これ」という枠にすぽっと当てはまるのではないか。

そこで、自分が心から「だから、何?」と思える句を出してみようと思った。
原宿句会の一週間前、代々木公園の秋バラが見ごろを迎えていたので撮影ついでに俳句の題材を探した。

わざわざ目を凝らして探すのではなく、ふと目の前を通り過ぎるような景色。そこに気になるものがあれば、レンズを向けていった。一枚、二枚・・・十枚と撮るうちに、被写体の新たな一面が見えてくる。さっきまで隠れていた昆虫が花の中から湧き出てきたり。花よりも、葉の葉脈が美しいと気づいたり。

その感性が、意外とそのまま俳句になったりする。
だから、カメラと俳句の「沸点」は、やはり比例しているのだ。

公園での撮影を終えて帰ろうとしたところだった。
明治神宮への入り口と、原宿駅をつなぐ「神宮橋」を歩いていた時、ふっと目の前を一輪車に乗った外国人が通り過ぎていった。

肩の空いたランニングシャツにハーフパンツ。ぼーっと歩いていた私の目の前を、颯爽と駆け抜けていった。季節は秋を迎えているのに、その薄着がやたら気になった。しかも、自転車じゃなくて一輪車。大道芸人じゃあるまいし。それでも「こんな天気のいい日に走ったら気持ちよさそう」、「ここから一輪車でどこに行くんだろう」客観的に、そう思った。別に、誰もかれも目を奪われる出来事じゃない。ほんの小さな、1ミクロンくらいの「興味」を惹かれた。

あっ、今のも俳句にできそう、と思った瞬間だった。

その句を家に持ち帰って推敲を重ねた。

最初は「秋晴や今からどこへ一輪車」と思い付いたが、これだと「一輪車」が目立ちすぎている。奇をてらってはいけない。「一輪車」というワードは第一優先だとしても、インパクトを持たせないようにしなければならない。

次に考えたのが「秋晴や追い風に乗る一輪車」これだと、スピード感は伝わるかもしれないが、原宿の街を行くという印象が伝わらない。
私が見たのは、肩の空いたランニングシャツ。原宿の街を一輪車で行く違和感。風に身を任せ、すっと通り過ぎていった光景。推敲を重ねた跡が、句帳に残っている。

最終的に、これと決めた句を提出した。その後、しばらくして・・・
自分が出した句も忘れたころ、日本伝統俳句協会 関東支部大会の選句集が送られてきた。驚くことに、自分の句が特選に入選していたのだ。
しばらく固まった。仕事以外で、久しぶりに、「選ばれた」という感覚を味わった。

秋晴れの街するすると一輪車

奇をてらわず、あえて「だから何?」と思える句を目指す。

どうやら、自分の仮説が立証されたようだ。
誰の目にも留まらない「1ミクロンの興味」に自信を持ってみるのもありだと思った。

本間 恵理

本間 恵理

ほんま えり

1988年生まれ 新潟県出身。東放学園専門学校卒業。学生時代にラジオの放送作家としてデビュー。テレビ番組の構成作家の事務所に勤めた後、独立。2020年7月、女性だけのリサーチユニット「ソラハナ」を発足。「東京ガールズコレクション」のようなティーン向けから、「演歌・歌謡曲」といったシニア向けまで、両極端なターゲットの番組にかかわるテレビマン。今回は、ライティングの仕事に初挑戦しました。 ...

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